5 敗訴の事例
5-1 職場で
5-1‐2000.04.14 S社事件(東京)
 社長X男から新入社員A女への言動がセクシュアル・ハラスメントとは言えないとされた事例
[裁判所] 東京地裁
[年月日] 2000(平12)年4月14日判決
[出典] 労働判例789号79頁
[事実の概要]
 社長X男は、試用期間中の新入社員A女と他1名の女性社員とビールを飲みながら雑談した際、「若い女性と飲むとおいしいね」「今度お好み焼きを食べに行きましょう」等と言った。A女は初回給料日に風邪で欠勤して翌日出勤したが、X男が外出中のため、給料が支払われなかった。夕方X男に電話をかけたA女が「なぜ支払ってくれないのか」と言ったところ、X男は「昨日あなたが休んだので払わなかっただけです。来月まとめてでもいいですよ」と答えたため、A女は「なんでわたしだけ差別するのですか」と言った。同夜11時頃、X男は当日までの給料を持参してA女宅を訪れ、解雇した。
[原告の請求] 約99万円。
[判決の概要]
 棄却。X男の発言はセクシュアル・ハラスメントとはいえない。A女が支払日の経過した給料の支払いを求めることは正当であるものの、発言にはやや適切さを欠き、対人的な折衝能力が求められる営業職としては雇用を継続することが困難であるとX男が判断したことには合理的な理由がある。
[ひとこと]