5 敗訴の事例
5-1 職場で
5-1-2004.04.27 K建設会社事件本案訴訟(愛知)
 被告会社が、セクシュアル・ハラスメントへの苦情を申し入れたA女に配転命令を出したところA女がこれに従わなかったために懲戒解雇したことにつき、セクシュアル・ハラスメントの事実がなく、配転命令違反に基づく解雇が有効であるとされた事例
[裁判所]名古屋地裁
[年月日]2004(平16)年4月27日判決
[出典]労働判例873号18頁
[上訴等]第1次仮処分:2003年1月14日 1-1-2003.01.14
     第2次仮処分:2004年2月25日(労働判例872号33頁)
[事実の概要]
 被告会社は、セクシュアル・ハラスメントへの苦情を申し入れたA女に配転命令を出したが、A女がこれに従わなかったために懲戒解雇した。
[原告の請求]雇用契約上の地位確認、未払給与の支払い
[判決の概要]
 請求を棄却する。A女の主張するセクシュアル・ハラスメント行為については、ただちにセクシュアル・ハラスメントと評価できるか極めて疑問であり、認定できない。苦情の申し入れに対して使用者の取るべき措置は、実際に発生したセクシュアル・ハラスメント被害の内容・程度に相応したものであることを要し、かつ、それで足りるので、A女の苦情申し入れに対して被告会社の取った措置は十分なものといえる。
[ひとこと]
 第1次仮処分決定では、被告会社の配転命令が不当な動機・目的に基づくとしたが、本判決では、セクシュアル・ハラスメントの事実がない以上、被告会社の対応を不当と非難することはできないとした。本件の解説に、山崎文夫「軽微なセクハラと労働者の就労拒否を理由とする配転・解雇」(労働判例874号5頁)。