5 敗訴の事例
5-1 職場で
5-1-2004.12.06 東京都海外事務所事件(東京)
 海外の事務所に赴任していた公務員X男が、公務終了後1時間30分以上経過した後に部下A女の自宅で同女に対して性的暴行に及んだが、右行為は公務とは無関係な勤務時間外かつ事業施設外の私的な行為であるから、それによりPTSD等を発症したとして公務災害の認定を求めるA女の主張は認められないとされた事例
[裁判所]東京地裁
[年月日]2004(平16)年12月6日判決
[出典]労働判例887号42頁 ≪確定≫
[事実の概要]
 海外の事務所に赴任していた公務員X男(50)は、公務終了後1時間30分以上経過した後に部下A女(32)の自宅で同女に対して性的暴行に及んだ。A女はPTSD等を発症したとして、地方公務員災害補償法に基づき公務災害の認定を請求したが、地方公務員災害補償基金はこれを公務外災害と認定した。A女が処分取り消しを求めて提訴。
[原告の請求]公務外災害認定処分の取り消し
[判決の概要]
 棄却。X男がA女に性的暴行に及んだことは認められる。しかし、右行為は公務とは無関係な勤務時間外かつ事業施設外の私的な行為であり、「公務遂行上の事故とはいえず・・・公務遂行性の要件が欠けている」。A女は公務におけるX男の支配関係から離脱できないままの状態で性的暴行を受けたのであるから公務遂行中の事故であると主張するが、「単なる事実状態として任命権者の支配があれば業務遂行性が認められるとすれば、補償の範囲が徒に拡大することになってしまい相当とは思われない」。
[ひとこと]
 上司による性的暴行の事実は認定されたが、公務との時間的・地理的隔たり(1時間30分後・自宅)から公務遂行性が否定され、これに起因すると主張した疾患が公務災害(=労災)とは認められなかった事例である。