5 敗訴の事例
5-1 職場で
5-1-2005.01.05 文書提出命令申立事件(兵庫)
基本事件(セクシュアル・ハラスメント裁判)に関連して、A女が、会社側が作成し、あるいは所持する文書について求めた文書提出命令の申立が、却下された事例
[裁判所]神戸地裁尼崎支部
[年月日]2005(平17)年1月5日決定
[出典]労働判例902号166頁
[上訴等]本決定の基本事件:5-1-2005.09.22
[事実の概要]
A女は基本事件(セクシュアル・ハラスメント裁判)に関連して、(1)会社側が作成したセクシュアル・ハラスメント調査に関連する事情聴取書、本社への調査報告書、労働局雇用均等室に提出した書類等、(2)会社側が雇用均等室から受けた指導等の内容が記載された文書等、および(3)会社側が捜査機関に提出した書類等により、会社側のセクシュアル・ハラスメント防止義務違反に基づく慰謝料請求権の存在や解雇権濫用等の事実が証明されるとして、文書提出命令を求めた。
[決定の概要]
申立はいずれも却下。A女は、相手方(会社側)には民事訴訟法220条4号の文書提出義務があるとして提出命令を求めたが、相手方の作成した文書(1)については、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」(最決99年11月12日民集53巻8号1787頁)であって、外部に開示されることが予定されておらず、開示されると相手方内部における自由な意見の表明に支障を来たし相手方の自由な意思形成が阻害されるなど看過し難い不利益を生ずるおそれがある。その不利益を補うほどの特段の事情は本件には認められない。捜査機関に提出した文書(3)は民訴220条4号ホに該当するので申立は理由がない。その余の文書(2)は、相手方が当該文書を所持していることを申立人(A女)が証明しなければならないが、申立人はその立証責任を果たしていない。
[ひとこと]
基本事件5-1-2005.09.22はA女の敗訴。