5 敗訴の事例
5-1 職場で
5‐1‐2008.03.26 TF堂菓子店事件(東京)
店長X男から業務中および業務後の酒席でなされた言葉によるセクシュアル・ハラスメントにより人格権等を侵害されたとして、会社を提訴したA女の請求が棄却された事例
[裁判所]東京地裁
[年月日]2008(平20)年3月26日判決
[出典]労働判例969号13頁
[上訴等]1-1-2008.09.10(原告の逆転勝訴)
[事実の概要] A女は、店長X男から業務中に「頭おかしいんじゃないの」、業務後の酒席で「処女じゃないでしょ」「キスされたでしょ」等と言われたことから、会社Yに対して使用者責任に基づく損害賠償を請求した。
[原告の請求] 慰謝料約650万円
[判決の概要] 請求棄却。X男が業務中にA女に対して「頭おかしいんじゃないの」、業務後の酒席で「処女じゃないでしょ」「キスされたでしょ」等と発言したこと、および酒席でのX男の発言によりA女が目に涙をうっすらためることがあり、同僚らがその場をとりなしたことは認められるが、これらの発言は「職場における雑談の域をでないもの」あるいは「酒席において、X男が職務上の注意や説教をする際に、それに関連して…原告と近隣店舗の男性従業員との関係等に及んだものと推認される」ので、違法な言動とはいえない。
[ひとこと] 控訴審では原告勝訴の逆転判決が出た。1-1-2008.09.10
この判決は正当にも覆されたのであえてコメントする必要はないかもしれないが、多々なされたX男の発言のうち少なくとも、上司が部下に対してその異性関係をとりあげ「処女じゃないでしょ」と述べることが違法性を帯びるかについては今日では争いの余地はない。にもかかわらず、これを「酒席における職務上の説教」の一環として容認できる裁判官の人権感覚に呆れ果てた。