敗訴の事例

-  医療の場で

--2002.01.21 SI大形成外科事件(埼玉)

形成外科教授X男から診断の際にセクシュアル・ハラスメントを受け、関連した記

事が週刊誌に掲載されたことで名誉を毀損されたとするA女の主張が、否定され

た事例。

[裁判所]新潟地裁

[年月日]2002(平14)年1月21日判決

[出典]朝日新聞・読売新聞とも(東京)2002122日朝刊

[事実の概要]A女(40代) は、埼玉医科大形成外科教授X男から手術のために診断され

た際、乳房に触わられ、顔写真や前屈して股間から顔を出した姿勢での写真撮影

を強要されるセクシュアル・ハラスメント行為を受け、さらにX男がその後週刊

誌上で「A女は精神分裂病ではないか」と発言したと主張した。

[原告の請求]約1,200万円、謝罪広告掲載。

[判決の概要]棄却。乳房に触わったり、顔写真を撮ったりしたことは認定したが、診療

に必要なもので、セクシュアル・ハラスメントやプライバシーの侵害にはあたら

ない。発言は「社会的相当性を逸脱するものではない」。

[ひとこと]

本判決後、教授X男は、本件提訴は不当提訴であるとして、A女、A女の弁護士、

およびX男を実名で報道したM新聞社に対し、合計2,710万円の損害賠償と謝

罪広告を求めて提訴した。2005年3月14日東京地裁判決(判例タイムズ11

79号149頁)は、X男の主張を以下のように認容した。A女は、虚構の事実に

基づく著しく不当な主張に依拠してX男を提訴しており、「裁判制度の趣旨目的に

照らして著しく相当性を欠く」不当提訴であるから、330万円支払え。A女の提

訴について記者会見を開いた弁護士は、「訴えの提起が後に不法行為と評価される

ことになったような事案については、その提訴に関する記者会見が名誉毀損と評価

され」得るので、55万円支払え。A女による提訴をX男の実名を掲載して報道し

たM新聞社は、「X男の実名を使用し、提訴内容たるセクシュアル・ハラスメント

を不当に強調する体裁を用いるなどした点で、プライバシー侵害の違法性が肯定さ

れる」ので、110万円支払え。