判例 セクシュアル・ハラスメントー利用上の注意―
谷田川知恵 (大学非常勤講師)
目的
   このページは、「裁判ではどういう行為がセクシュアル・ハラスメントとして違法とされるのか」という問いに応えるために、日本における、性的言動をめぐる民事裁判事件をできるだけ多く集めた事例集の作成を試みるものである。集められた事件のなかには、セクシュアル・ハラスメントという語にまったく言及していない判決や、論者によっては行為態様から考えてセクシュアル・ハラスメント概念にはあたらないと評され得る事例もあるが、ここでは原則としてセクシュアル・ハラスメントを「事実上のなんらかの不均衡な力関係を背景にした性的言動」と理解し、あらゆる場におけるあらゆる性的言動をめぐる民事訴訟を取り上げることにした。この目的のため、判例集のみならず新聞で報道されただけの事例も、また、判決・決定のみならず訴えの提起後に和解した事例もとりあげている(訴えの提起に至らない事例〔起訴前の和解や企業等内部での処分のみの事例〕は含まない)。したがって、タイトルは「判例 セクシュアル・ハラスメント」ではあるものの、一般にいわれる判例集の枠内には(いろいろな意味で)収まらないものであるから、「判例集」ではなく、「訴えの提起後に法的な解決を見た事件例集」とでも呼ぶ方がふさわしい内容となっている。

収集範囲
 ここに掲載されているのは、(1)GALに寄せていただいた判決の謄本と、(2)公刊されているいわゆる判例集および(3)朝日新聞・読売新聞のデータベースから得た事件である。セクシュアル・ハラスメント行為者対被害者の訴訟のみならず、セクシュアル・ハラスメント疑惑をかけられた者からの名誉毀損訴訟も含む。(1)のうち判例集に登載されていないものを「判例集未登載」とした。(2)の一部の事件と(3)のすべての事件は、出典に判決全文が掲載されていないため、記事にされている断片的な情報のみに基づいて本文を作成した。

分類方法
   すべての事件は行為者の身分によって分類されている。分類別一覧表では分類ごとの全事件の概要を見ることができる(別掲「分類目次」参照)。

見出し
 見出しは、分類番号、判決年月日(日付不明はゼロを代用)、事件名からなる。

事件名
 原則として任意のアルファベット+業種名とし、著名なキーワードがあればそれを記し、( )内に都道府県名を入れた。

新聞出典情報
 新聞紙名(発行社名)、西暦年月日、朝夕刊別の順に記した。掲載面はおもに社会面と地 域面であるが、割愛した。

上訴等
   原審と異なる判断をした上級審は別に見出しを設けて掲載した。棄却や、新聞が出典で詳細が不明の事件は、原審の[上訴等]あるいは[ひとこと]欄への記載にとどめた。上級審・下級審ともに出典が新聞である場合には情報量が少ないことから、審級毎に判断が異なる事件でも、原則として最終審のみを取り上げた。

年齢
 参考までに、各資料から推測できた事件当時の当事者の年齢を付したが、実際とは異なる場合がある。

引用者の挿入
 [判決の概要]における引用文「 」中の( )は原文のままであり、〔 〕は引用者による挿入。

 
TOP BACK