判例 働く女性の問題
1 賃金、昇進・昇格

1−2000.2.23 シャープエレクトロニクスマーケティング事件
昇格の遅延は男女差別でありその結果賃金に格差をもうけるのは労基法3条・4条違反であるとして慰謝料500万円の支払いが命じられたが、差額賃金の請求は認められなかった判例
[裁判所]大阪地裁
[年月日]2000(平成12)年2月23日判決
[出典] 労働判例783号71頁
[事実の概要]
被告会社の従業員である原告が、女性であることを理由に配置,昇進・昇格および賃金について不利益な差別を受けたとして、遅くとも昭和60年までに昇格するべきなのに、平成3年まで昇格させなかったことに対して昇格した地位の確認および不法行為などを理由とする損害賠償を求めた。
[判決の要旨]
労働者一部勝訴(双方控訴係争中)
昇格の差別を認め、慰謝料500万円の支払いを被告会社に命じた。
「……被告会社は、昭和60年4月から平成2年3月まで、原告をB3の格付のままとどめ置いたが、これは男女を理由とする差別といわざるをえないものである。男女という性を理由に格付を差別し、その結果賃金に格差を設けることは、労働基準法3条及び4条に反するものであり、被告の右差別扱いは不法行為を構成する。」
「……原告が格付について差別を受けたことにより、著しい精神的苦痛を受けたことは明らかというべきである。そこで、これによって具体的には認定できないものの本来受けるべき賃金により低額な賃金しか受給していなかったことを含め、本件記録から窺われる諸般の事情を考慮し、原告に支払われるべき慰謝料としては500万円をもって相当とする。」
[ひとこと]
人事考課による格付・賃金決定について差別を争ったケース。あいまい・不透明な人事考課は性差別の温床で、アメリカでは、すでに70年代に多くの判決が出され査定に差別が入らないよう規制が加えられている。判決は、男女間の格差や人事考課の差別的運用の可能性を指摘しておきながら、「労働意欲の低い女性も多かった」「原告はミスが多い」として一部分しか差別を認めなかった。裁判官の女性労働者に対する偏見が色濃く出た判決である。(KY)