判例 働く女性の問題
1 賃金、昇進・昇格

1−2005.12.28 I山(賃金台帳提出命令)事件
男女賃金差別の有無が争われたときは、その事実の存否を立証するために賃金台帳は通常不可欠な立証方法であり、挙証者以外の労働者の賃金台帳も文書提出命令の対象となる。
[裁判所]東京高等裁判所
[年月日]2005(平成17)年12月28日決定
[出典]労働判例915号107頁
[事実の概要]抗告人Y社に勤務する女性従業員Xが、Y社の男女差別による賃金の事実を立証するために、賃金台帳の提出を命令の申立をした。
1審決定(さいたま地裁2005年10月21日決定労働判例915号114頁)が、「文書提出命令の申立ては、申立人以外の記載を除く部分の提出を求める限度で理由がある」としたことに対する抗告事件。
[決定の概要]
「賃金台帳は、労働者のプライバシー保護は一定の範囲で制約を受けることがあることを前提として作成された文書であるというべきである。……本件のような男女差別賃金の有無が争われた訴訟においては、その事実の存否を立証するために賃金台帳は通常不可欠な立証方法であることや、挙証者以外の労働者の賃金台帳が民訴法220条所定の法定除外事由にも直接には該当しないことからすると、現行法のもとでは、挙証者以外の労働者の賃金台帳は文書提出命令の対象となり、その限度では挙証者以外の労働者のプライバシー保護も制約を受ける。」