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1 賃金、昇進・昇格
1−2007.1.23 Nオートマチックマシン事件
原告女性に特に基本給月額や等級が低くなる特段の事情がない限り、賃金等の格差は、原告が女性であることを理由に差別的な扱いを受けたことによって生じたものと推認することが相当であるとして、損害賠償請求を一部認容した事例
[裁判所]横浜地裁
[年月日]2007(平成19)年1月23日判決
[出典]労働判例938号54頁 ジュリスト1352号155頁
[事実の概要]
被告は、各種電子部品の製造、販売等を目的とする株式会社で、当時の従業員は男性349人、女性63人であった。原告は、被告に昭和57年12月から平成15年7月まで勤務した。被告従業員の賃金の基本給は、「等級」及び「号数」によって定められる本給とこれに一定比率を乗じあるいは一律の定額を加算した加給から成っていた。原告と年齢がほぼ同じで、学歴、等級が等しい対象男性従業員を比較すると、基本給額及び同じ等級内での号数に相当の格差が存在していたため、原告は、被告に対し、女性であることを理由に男性と差別的取り扱いを受けたとし、不法行為に基づき、男性従業員の賃金の平均額との差額を損害として賃金相当損害金、賞与相当損害金等の賠償を求めた。
[判決の概要]
被告の平成15年度の各等級における男女比(例えば、Y等級は全員男性が占めるのに対し、U等級は約半数が女性)から、同一年齢の男女間に、基本給月額及び等級のいずれも相当の格差(本件賃金格差)が存在するとし、平成15年5月当時の原告及び原告とほぼ同年齢(50乃至60歳)同学歴(高卒)の男性従業員27人の平均基本給月額及び号数の比較から、基本給額及び同じ等級内での号数に相当の格差(本件原告格差)が存在していたことが認められるとした。
その上で、本件賃金格差の存在は、合理的理由が認められない限り、女性であることを理由に被告が差別的な取扱いをしていることを窺わせるところ、本件原告格差の存在にこれを併せ考えると、原告に特段の事情がない限り、本件原告格差は、原告が女性であること理由に差別的取扱いを受けたことによって生じたものと推認することが相当であるとした。
そして、被告が主張する本件賃金格差の理由の合理性をいずれも否定し、本件賃金格差は、女性であることを理由に被告が差別的な取扱いをしたものと疑わせるとし、原告の昇給が滞ることについての具体的な被告の主張、立証はなく、原告格差を正当化する特段の事情はないことから、原告は被告から女性であること理由に差別的取扱いという不法行為を受けたと推認するのが相当であるとした。
[ひとこと]
一般論としては相当である。個々の賃金格差の合理性については、一般的な判断基準を示すものではなく、個別の検討が必要である。
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