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判例 働く女性の問題
1 賃金、昇進・昇格

1−2011.12.27 K社事件
産休及び育児休業からの復帰後の報酬減額及び成果報酬ゼロ査定につき、人事権の濫用にあたり無効であるとして、賃金差額及び損害賠償の一部を認めた事例
[裁判所]東京高裁
[年月日]2011(平成23)年12月27日判決
[出典]労働判例1042号15頁、LEX/DB25480114
[事実の概要]
被告K社は、ゲームソフトの制作・販売等を業とする会社である。K社の社員の年棒は、担当業務の役割グレードに連動する役割報酬、年棒査定期間中の実績(前年度の成果評価に基づく査定となる)に応じて支給される成果報酬、年棒の激変緩和等個人の状況に応じて柔軟に支給される調整報酬により構成されている。
原告Xは、K社の従業員であったが、育児休業からの復帰後、@担当職務を自らの希望しない業務に変更され、Aそれに伴い役割報酬の決定基準となる役割グレードが引き下げられ、B前年度に産休に入るまでの間に見るべき成果を上げていないことや産休後に迎えた繁忙期を経験していないことなどが考慮され成果報酬がゼロと査定されるなどの扱いを受けた。そこで、Xは、K社の人事措置は、妊娠・出産をして育児休業等を取得した女性に対する差別ないし偏見に基づくものであって人事権の濫用に当たるほか、憲法13条及び14条等にも違反する無効なものであるとして、差額賃金の支払い及び不法行為に基づく損害賠償の支払い等を求めた。
原審(東京地判平成23年3月17日労働判例1027号27頁)は、@担当職務の変更については、K社の業務上の必要性に基づきなされたものであること、Xが育休等を取得したことを理由としてされたものではなく、育児・介護休業法10条に定める不利益取扱にはあたらないこと、育休からの復職に当たり原職及び原職相当職へ復帰させることを定める育児・介護休業法及び同指針は努力義務にすぎないことなどから、人事権の濫用にはあたらないとした。また、A役割グレード引き下げについても、K社の人事制度に適応した措置であり、担当職務の変更が業務上の必要性に基づいたものであることを踏まえると、内容自体不合理なものとはいえず、人事権の濫用とは言えないとした。他方、B成果報酬のゼロ査定については、Xが産休を取得するまでの期間の業務実績を考慮していないことから、裁量権の濫用として無効とし、K社に対し、Xが被った精神的損害等として35万円(内、弁護士費用5万円)の賠償義務を認めたものの、その余の請求を棄却した。
これに対し、Xが控訴したのが本件である。
[判決の概要]
裁判所は、@Xの担当職務変更については合理的な理由が認められるものとしつつも、A就業規則や年棒規程に明示的な根拠もなく、労働者の個別の同意もないまま、使用者の一方的な行為によってそのような重要な労働条件を変更することは許されないとして、役割グレードの変更及び役割報酬の減額は、たとえ担当職務の変更を伴うものであっても、人事権の濫用であって、無効であるとした。さらに、B成果報酬ゼロ査定については、「育休取得後、業務に復帰した後も、育休等を取得した休業したことを理由に成果報酬を支払わないとすることであり、…育休等を取得して休業したことを理由に不利益な取扱いをすることに帰着するから、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の就労の確保を図ることなどを目的の一つとしている雇用機会均等法や、育児休業に関する制度を設けるとともに子の養育を行う労働者等の雇用の継続を図ることなどを目的としている育児・介護休業法が、育休等の取得者に対する不利益取扱いを禁止している趣旨にも反する結果になる」として、K社が平成21年度の成果報酬を合理的に査定する代替的な方法を検討することなく機械的にゼロと査定したことは、人事権の濫用として無効とした。
以上により、役割報酬の減額に関する差額賃金として35万4168円、成果報酬ゼロ査定に関する慰藉料30万円、弁護士費用30万円、及びこれらの遅延損害金の支払義務を認めた。
[ひとこと]
原審では、B成果報酬ゼロ査定のみの損害認定であったが、控訴審では、Bのほか、A役割報酬の減額についての損害も認められた。控訴審では、成果報酬ゼロ査定が雇用機会均等法や育児・介護休業法により直接無効になると認定判断するものではないとしつつも、これらの法の趣旨を取り入れ判断がなされている点が参考になる。
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