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判例 働く女性の問題
1 賃金、昇進・昇格

1−2013.7.18 C電力会社事件
32年勤続した女性が、昇進・昇格や賃金に男女差別があったとして会社に対し損害賠償などを請求したが棄却等された事例
[広島高裁2013(平成25)年7月18日判決 労働経済判例速報2188号3頁、LLI/DB(L06820367)]
[事実の概要]
控訴人は、1981年、被控訴人(C電力会社)に雇用され、現在も勤務している従業員である。控訴人は、職能等級の昇格、職位の昇進において、女性であることを理由に不当な差別的取り扱いを受け、本来あるべきものより低い職能等級及び職位にされているなどとして、被控訴人に対し、不法行為に基づき損害金1320万円等と遅延損害金、過去の一定の時期から現在まで一定の職能等級にあることの確認を求め、過去の一定の時期から現在まで主任の地位にあることの確認を求めた。
原判決(広島地裁平成20年(ワ)第825号)は、控訴人の過去の一定の時期から現在まで一定の期間に一定の職能等級や職位にあったことの確認を求める訴えはいずれも確認の利益を欠き不適法として、却下し、その余の請求を棄却した。
控訴人は、控訴審において、過去の一定の時期から現在まで主任の職位にあることの確認請求を取り下げ、特定の時期に主任1級の職能等級にあり、特定の時期に管理3級の職能等級にあることの確認請求に減縮し、不法行為ないし労働契約に基づく賃金支払請求権に基づき、主位的に1148万1900円と遅延損害金の支払い等を求めた。
[判決の概要]
控訴人の訴えのうち、確認を求める部分は、確認の訴えにおいて、過去の権利関係を対象とするには、これを確認することが現在の権利関係をめぐる紛争の解決にとって適切であるような特段の事情が必要であるところ、そのような事情が認められないから、確認の利益を欠き、不適法であるとして、却下した。
控訴人は以下のように主張した。被控訴人の職能等級制度は、一定の勤続年数(滞留年数)を経れば上位の等級の仕事を処理する能力が形成されるとみて将来に期待するという年功的運用がされているところ、女性従業員の滞留年数を男性従業員の滞留年数より長くする運用がされている。運用は具体的には人事考課によって行われているが、男性従業員の評価点を上げて昇格措置がとられ、女性従業員については評価点をことさら低くしている。その結果、控訴人と同期同学歴の男性従業員は、圧倒的多数が2003年までに主任1級に昇格し、2007年、遅くとも2009年には管理3級に昇格している。ところが、同期同学歴の女性従業員は主任2級に留められているなど、男女間に顕著な差が生じている。役職の昇進についても、同期同学歴の事務系の男性従業員は、37歳までに69.8%が主任の地位に昇進しているが、同女性従業員の主任の職位への昇進は、2.8%に過ぎない。この女性差別人事は、労働基準法4条、均等法6条に違反する。控訴人は、平均以上の業績を上げ、不適切な業務の是正を求める等、業務の改善にも努めてきた。
判決は、「職能等級制度はもとより、人事考課の基準等にも、男性従業員と女性従業員とで取扱いを異にするような定めはない。」評定基準は作成された上公表されており、評定者に女性を登用したり、評定者に対する研修が行われたりしており、「評価の客観性を保つ仕組みがとられている」。女性従業員と男性従業員との比較については、男性間にも昇格の早さには違いがあり、賃金にも差があるとした。控訴人に対する人事考課は、評定基準に従い、適正になされており、女性であることを理由に恣意的な評定がされたと認めるに足りる証拠はない。
控訴人の不法行為ないし労働契約に基づく賃金支払請求権に基づく請求を棄却した。
[ひとこと]
報道によれば、被控訴人の人事賃金制度について鑑定意見書を書いた聖心女子大学の大槻奈巳教授は、「男性の昇格は年功的な運用である一方、女性の昇格は男性の大半が昇格したあとに始まるという不平等な構造がある」と指摘する(毎日新聞2013年7月17日朝刊)。
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