判例 働く女性の問題
1 賃金、昇進・昇格

1−2015.10.2 都立H療育センター事件(東京)
育児で時短勤務となったことを理由にした昇給抑制につき育児介護休業法違反と認められた事例
[東京地裁2015(平成27)年10月2日判決 労働判例ジャーナル46号2頁、LEX/DB25541445]
[事実の概要]
社会福祉法人Aが運営する都立H療育センターに勤める看護師の女性ら3人が、2010年、育児のために勤務を1日6時間とする制度の利用を開始した。その後3年間の昇給は、勤務成績に応じた本来の昇給より低く抑えられた。
看護師の女性ら(原告ら)は、社会福祉法人Aに本来の昇給分との差額の支払いを請求すべく訴訟を提起した。
[判決の概要]
判決は、育児介護休業法は、仕事と家庭の両立に寄与することを通じて労働者の福祉の増進を図ることなどの目的(1条)の下、労働者が時短勤務の制度を利用したことを理由に、事業朱が解雇その他不利益な取扱いを禁じている(23条の2)。同規定は強行規定と解するのが相当であり、時短勤務の制度を理由として解雇その他不利益な取扱いをすることは、その不利益な取扱いをすることが同条に違反しないと認めるに足りる合理的な特段の事情が存しない限り、違法であり、無効である。
本件昇給抑制は、一律に8分の6を乗じた号棒を適用するものであるところ、このような一律的な措置に合理性は乏しく、育児介護休業法23条の2に違反する不利益な取扱いに該当する。
以上より、原告らの請求を一部認容し、計約70万円の支払いを命じた。