判例 働く女性の問題
1 賃金、昇進・昇格

1−2015.11.17 A社事件(広島)
1−2014.10.23の差戻審で一審原告の女性の請求を破棄した原判決を変更し一部認容した事例
[広島高裁2015(平成27)年11月17日判決 労働判例1127号5頁、判時2284号120頁、LEX/DB25541627]
[事実の概要]
1−2014.10.23と同じ。
[判決の概要]
異動先が一審原告の希望であったと一審被告は主張したが、自由意思に基づく承認があったとは認められない。事前に原告が副主任を免ぜられることについて承諾したとの主張、事後承諾があった旨の主張も裏付けるに足りる証拠がない。
一審被告は、一審原告が独善的で協調性を欠き、職責者適格性がなく、一審原告を降格させないことにより、一審被告の業務運営に支障が生じその程度が重大であると主張したが、判決は、「上司の意見や組織の方針に対して反論非難することが、一般論として、独善的かつ協調性を欠き、職責者適格性を欠くことになるとはいえない」等として、この点も退け、降格措置の必要性とそれが均等法9条3項に実質的に反しないと認められる特段の事情はないとした。
その上で、最高裁判決により、均等法9条3項の規定を強行規定と解され、女性労働者につき軽易業務への転換等を理由として不利益な取り扱いをすることは同項に違反して無効であるとされたことを踏まえ、本件措置は不法行為又は債務不履行となるとした。
以上を踏まえ、一審被告に対し、措置により減額された出産手当の減額分、慰謝料100万円、弁護士費用30万円の合計175万3,310円の支払いを命じた。
[ひとこと]
いわゆるマタハラ問題が政策課題として注目される契機になった事案であるが、勤務先にて就労を続けながら、勤務先から「独善的かつ協調性を欠く」等の主張をされ、訴訟活動を続けるのは、負担が大きかったことだろう。そのような負担を考えると、認容額はあまりに低いように思われる。しかし、本件を機に、厚労省はマタハラが違法であることの周知徹底に積極的となっており(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000089158.pdf)、今後このような不利益取扱いがなされなくなることを期待したい。