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判例 働く女性の問題
4 母性保障

4−2001.4.17 T学園事件
産休と育児時間を取得したことを理由にボーナスを全額カットしたのは、労働基準法の趣旨に反すると判断した判例
[裁判所]東京高裁
[年月日]2001(平成13)年4月17日判決
[出典] 労働判例803号11頁
[事実の概要]
T学園では、出勤率が90%に満たない職員には、夏・冬の一時金は支給しないとする支給要件を定めていた。そして、就業規則で保障している休暇などのうち、出産休暇、生理休暇、育児のための時間短縮措置(育児・介護休業法にもとづく労働時間短縮措置として就業規則で保障したもの)だけ欠勤とみなして出勤率を算定することにしていた。産後休暇を取得し、育児時間短縮措置の適用をうけて子育てしてきた女性に対し、T学園は、出勤率が90%に満たないとして一時金全額を不支給にした。これに対して、女性が、出産休暇や育児時間短縮措置の適用を出勤率算定にあたって欠勤扱いすることは、公序の反するとして一時金全額の支払いを求めた。
[判決の要旨]
女性の主張を認め、一時金の全額が支給されるべきだとした。要旨は次の通りである。
本件90%条項の趣旨・目的は、従業員の出勤率を向上させ、貢献度を評価することにあり、もって従業員の高い出勤率を確保することを目的とするものである。そうした点で経済的合理性を有している。その本来的な意義は、欠勤・遅刻・早退のように労働者の責めに帰すべき事由による出勤率の低下を防止することにあり、合理性の本体もここにある。
出産休暇や育児時間短縮措置のように法により、権利、利益として保障されるものについては、労働者の責めに帰すべき事由による場合と同視できないから、90%条項を適用することによって法の趣旨を損なう場合には、その限度で90%条項の合理性は否定される。したがって、90%条項中、出産休暇と育児時間短縮を欠勤扱いして、これを出勤すべき日数に算入し、出勤した日数から除外すると定めている部分は、労働基準法65条、同67条、育児休業法10条の趣旨に反し、公序良俗に違反して無効である。
また、不就労期間に対応した減額をどのように行うかは当事者間の私的自治に委ねられており、また、その基準をどうするかについては、各業界・企業によって区々であり、減額する場合であっても休業した期間の一定日数または一定割合を出勤扱いとする制度設計もありうるから、休業日数に正比例して賞与をカットすることが一般原則であるとまでは認められない。
90%条項を出産休暇と育児時間短縮措置に適用することが公序良俗違反として無効とされたときには、当該一時金の支給要件および算定基準は、除外規定(休暇のうち出産休暇などは他の休暇と違って欠勤とするという規定)がない状態になるのだから、全額が支給されて当然である。
[コメント]
この事件では、出産休暇など女性が取得する休暇や育児時短措置のように主に女性が取得すると思われる権利についてだけ出勤率算定にあたって欠勤扱いしており、その点で、同じ不就労なのに、これらの不就労だけ出勤率や企業貢献度の評価が低くされる合理性が問題になった。判決は、労働の責めに帰すべき欠勤と同じようにマイナスに評価することは、これらの権利を保障する法律の趣旨に反するとして、欠勤扱いを認めなかったが、この考え方は、一時金のみならず、昇給、昇格、昇進にも及ぼすことができる。女性が出産・子育ての為に一定期間職場を離れたとき、これらの労働条件に不利益が及んでもやむをえないという考え方は、改めなければならなくなった。(NM)
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