判例 働く女性の問題
5 退職・定年

5−2001.1.15 鳥屋町職員事件
男女別退職勧奨を地方公務員法13条違反として損害賠償を認めた判例
[裁判所]金沢地裁
[年月日]2001(平成13)年1月15日判決
[出典]労働判例805号82頁
[事実の概要]
被告町は、行政職男子58歳、同女子48歳に該当する職員を退職勧奨する制度を実施した。
これに基づき、町長は、原告に対し退職勧奨を行い、これに応じなかったことを主要な理由として原告に昇給停止という不利益な取扱いを行った。原告はこの退職勧奨制度は、地方公務員法13条に違反しており、また町長の行為は、違法な公権力の行使であり、少なくとも過失があったとして、賃金差額相当額の損害賠償と慰謝料などを求めた。
[判決の要旨]
男女間の10歳の差のある退職勧奨制度は違法であるとした。
「被告における本件勧奨退職制度は、前記認定のとおり、行政職の男子と女子とで退職勧奨年齢を10歳も異にするものであって、その区別について合理的な理由があると認めるに足りる証拠はないから、右制度は、もっぱら女子であることのみを理由として差別的取扱いをするものであって、地方公務員法13条に反し違法なものであるといわなければならない。」
「……原告が退職勧奨に応じるか否かは、あくまで原告の自由な意思によるべきであるのに、原告の近親者の原告に対する影響力を期待して、原告が退職勧奨に応じるよう説得することを依頼することは退職勧奨方法として社会的相当性を逸脱する行為であり、違法であると評価せざるを得ない。」
「……町長は、……原告に対し、本件昇給停止という不利益な取扱いを行ったものであって、前記行為は、違法な公権力の行使といわなければならず、また、前記事実関係によれば、前記行為に当たり、町長に少なくとも過失があったことは明らかといわなければならない。 したがって、被告は、原告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、原告が受けた損害を賠償すべき義務がある。」