判例 働く女性の問題
5 退職・定年

5−2002.7.13 アール・エフ・ラジオ日本(定年制)事件
原告たちが満55歳に達した平成4.5年の時点では、60歳定年がすでに主流であったとしても、被告会社の55歳定年制が、公序良俗に反し違法・無効なものであるとはいえない、また憲法違反とはいえないとした判例
[裁判所]東京地裁
[年月日]2000(平成12)年7月13日判決
[出典]労働判例790号15頁
[事実の概要]
アナウンサーとして被告会社に雇用されていた女性2名が、平成4年および5年に満55歳になったため、就業規則に基づき定年退職扱いされた。これに対して55歳定年制は、憲法27条1項、14条1項に違反し、また公序良俗に違反する違法・無効なものであるとして、満60歳到達時までの労働契約上の地位確認と賃金を請求した。
[判決の要旨]
本件の55歳定年制は公序良俗違反・憲法違反とはいえないとした。
「……原告らの55歳到達時である平成4年及び5年の時点においては、60歳定年制が既に放送業界を含む産業社会で主流となっていて、被告が本件55歳定年制の改正を行っていなかったことは高年齢者雇用安定法上の努力義務を怠ったものであるとの指摘を免れないとしても、本件55歳定年制をとらえて、公序良俗に反する違法・無効なものであるとか、原告主張の憲法の各規定の趣旨に反するものであるとかの評価を与えることは、いまだ困難であるといわざるを得ない。」
[ひとこと]
この会社の就業規則は男女別定年制ではなく、平成7年には定年年齢は60歳に引き上げられている。高齢社会における定年延長を考える際の参考判例としてあげた。55歳から60歳への段階的な定年延長が問題にされたケースとして青森放送事件=青森地裁93年5月16日判決(労働判例630号19頁)がある。