判例 働く女性の問題
6 解雇

6−2000.4.24 愛宕産業事件
セクシュアル・ハラスメント被害を訴えて転居し、以後就労していない住み込み寮母に対する解雇は有効であるとした判例
[裁判所]大阪地裁
[年月日]2000(平成12)年4月24日判決
[出典]労働判例796号87頁
[事実の概要]
福祉施設の寮母として寮に住み込み、管理人夫婦を補佐して、食事の準備や清掃を行っていた女性が、管理人からセクシュアル・ハラスメントをされているとして、住み込みをやめて就労もしなくなったので、解雇予告手当を支払って解雇した。それに対して女性が、解雇には合理的な理由がなく無効であると主張、地位保全と賃金の仮払いを求めた。
[決定の要旨]
就労拒絶には正当な理由が認められないとして、解雇権の乱用はないとした。
「……債権者は、債務者から勤務態度の不良を追及されると、突然、管理人からのセクシャルハラスメント被害を訴え、住込寮母として雇用条件で雇用されていたにも関わらず、自ら転居し、以後就労していないのであるが、これは本来勤務態度の不良とは関係のない事実を持ち出して自らに対する責任追及を転嫁しようとしたものというほかなく、債権者の就労拒絶には正当な理由があるとは認められない。債権者は10月16日の債務者からの再度の事情聴取に対して、要求された弁明にも応じようとはしておらず、このような債権者の態度からすると、もはや債権者には就労意思がないものと認定した債務者の判断は相当というべきである。
そうすると、就業規則所定の『やむを得ない事由が発生したとき』に該当するとしてなされた本件解雇には合理的な理由があると解され、解雇権を濫用したものとは認められないので、被保全権利については疎明が十分でないというほかない。」
 
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