7 パートタイム労働と派遣労働

7−2000.4.17 W事件
約15年継続雇用されてきた場合、終身雇用に対する期待には合理性があるとして、パートタイマー就業規則に基づく解雇は不合理であるとした判例
[裁判所]大阪地裁
[年月日]2000(平成12)年4月17日決定
[出典] 労働判例792号138頁
[事実の概要]
昭和57年から59年まで派遣労働者として就労、59年7月から直接雇用されていた女性が平成12年1月、パートタイマー就業規則にのっとり解雇された。これに対して解雇は無効であるとして、地位の保全と賃金の仮払いを求めた。
[決定の要旨]
解雇に合理性がないと判断した。
「……債権者の労働条件は、賃金が時間給とされ、勤務時間も通常の従業員とは異なるなど、同就業規則所定のパートタイム従業員に近い面を有するものの、同就業規則では適用対象となるパートタイマーを特定時間就業する期間雇用の従業員と定義しているのであって、債権者との雇用契約に期間の定めはないのみならず、精励手当ては支給せず、賞与は支給するなど債務者自身、債権者に対して同就業規則所定のパートタイム従業員とは異なる処遇をしてきており、債権者が同就業規則が予定するパートタイム従業員に該当するといえるかには疑問がある。」
「……当初は主として英文タイプによる書類作成事務が念頭に置かれていたとはいえ、債権者は、専らその事務のみに従事してきたというものではなく、コンピューター導入後はコンピューターを使用した書類作成事務をも担当してきており、雇用契約上、債権者の担当業務を英文タイプのみに限定するものであったとは解し難いし、債権者は、期間の定めなく雇用され、既に15年余りもの期間継続して雇用されてきているのであるから、このような場合、債権者が終身雇用に対する期待を抱くのは当然であり、その期待には一応の合理性があるというべきである。
以上によれば……債務者側の需要の有無のみに基づいて本件解雇の有効性を判断するのは相当でないというべきである。
債務者は、本件解雇をいわゆる整理解雇ではないと主張するが、本件解雇は、債権者が余剰人員化したことを理由になされているのであるから、整理解雇の範疇に入れられるべきものである。そして、整理解雇が有効とされるためには、人員削減の必要があること、その手段として解雇を選択することが必要であること、人選が合理的であること、手続きが妥当であることが必要と解される。」
「……債務者では、経費節減のためとはいえ、人員削減手段として、通常の従業員に対しては自然減に待つというだけで格別の措置はとられていないが、いかに通常の従業員と労働条件が異なるとはいえ、債権者は、臨時雇や期間雇用とは異なり、期間の定めなく雇用された従業員であり、終身雇用を期待することももっともと解されるのであるから、そのような立場にあった債権者を解雇するには、債務者において、先に希望退職者を募り、債権者の配置転換を打診するなどの解雇回避のための措置をとることが要請されていたというべきであるし、手続上も、人員整理の必要性などについて債権者に説明を志して、納得を得るように十分協議を行う義務があったというべきである。」
「……債権者が国際営業部で余剰人員化しているという事情のみではいまだ本件解雇に合理的な理由があると認めるに足りない。」
[ひとこと]
債権者は、英文タイプに従事する派遣労働者として、2年間勤務した後、直接雇用され、1年契約を15年間更新してきたが、業務縮小を理由に解雇された。この決定は、15年間の雇用継続を重視し、債権者が終身雇用に対する期待には合理性がある、として解雇無効の判断をしたもので、有期雇用で働く人たちの権利保護に役立つ判決である。(HY)