7 パートタイム労働と派遣労働

7−2001.9.10 全国社会保険協会連合会(本訴)事件
1年の期間で雇用されたパートタイム看護婦が、その後雇用期間を6か月とする労働契約を2回更新したのは、実質的に期間の定めのない契約に当たるとは言えないが、雇用継続に対する合理的な期待があるとして、解雇に関する法理が類推適用されるとした判例
[裁判所]京都地裁
[年月日]2001(平成13)年9月10日判決
[出典] 労働判例818号35頁
[事実の概要]
ハローワークから紹介されて被告病院に平成10年2月20日、1年の雇用期間で雇用された原告が、その後、組合の交渉によって2回の契約更新をしたが、平成12年3月31日で契約が終了したとして、雇用の継続を拒否された原告が地位保全の仮処分申請を行うとともに、地位確認の訴えをした。
[判決の要旨]
この雇い止めは、期間満了のみを理由とするもので、客観的に合理的な理由があるとはいえないので、原告がパートタイム看護婦としての地位にあることを認めた。
「……原告と被告との間の労働契約は、実質的に見て期間の定めのない契約に当たるということはできないが、原告に雇用継続に対する合理的な期待があり、解雇に関する法理が類推適用されるというべきである。すなわち、原告は被告との間で、期間の定めのある労働契約を締結したのであるが、期間満了後の雇用継続に関する被告側の採用面接時の説明、原告の職務内容の正規職員看護婦との異同、契約更新に至った経緯、被告側の更新時の説明、他のパートタイムの看護婦に対する雇止めの実例の有無、被告病院の外来の本件雇止め後の状況等の諸事情を勘案すると、原告が期間満了後の雇用継続を期待することに合理性があるということができ、この期待は法的保護に値するものであるから、原告に対する雇止めには解雇に関する法理が類推適用され、単に労働契約の期間が満了したというだけでは雇止めは許されず、客観的に合理的な理由が必要であり、これを欠く雇止めは社会通念上相当として是認することができないといわなければならない。ところが、本件雇止めは、期間満了のみを理由とするものであって、客観的に見て合理的な理由があるとはいい難いので信義則上許されないものというべきである。」
[ひとこと]
期間(有期)雇用契約は、約定期限の到来により当然に終了し、民法上の契約原則に従えば、雇用契約が何回更新されても、その都度期間雇用がなされたにすぎないことになります。したがって、期間雇用契約が反復更新されているかぎり、使用者は、あたかも期間の定めのない雇用契約を締結したのと同様に労働者を継続的に雇用しながら、解雇等についての労働諸法規の適用を免れ(=使用者はいつでも期間満了を理由に「雇止め」ができる!)、労働者は極めて不安定な地位に置かれることになります。このような不合理な状況の是正をめざして、判例は今日では、古典的な民法上の契約原則を修正して、反復更新された期間契約が、職務内容・更新手続・採用・更新時の諸事情などを総合的に勘案して、客観的に「期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態」(東芝柳町工場事件=最高裁判所76年7月22日判決、民集28巻5号927頁)や、当事者が「雇用継続を期待できる状況」(日立メディコ事件=最高裁判所86年12月4日判決、労働判例486号6頁)にある場合には解雇法理が類推適用され、更新拒絶(=雇止め)には「客観的で合理的な理由」が必要としています。
本件は後者のケースであり、仮処分決定(京都地裁00年9月11日決定)、異議決定(京都地裁01年2月13日決定)、本訴判決(本件)、保全抗告決定(大阪高裁01年10月15日決定、労働判例818号41頁)と4つの判断が示され、いずれの判断も、労働者の継続雇用への期待の合理的性について、「当該雇用の臨時性・常用性、従事する業務の内容、更新の回数、更新の際の経緯、雇用継続の期待を持たせる使用者側の言動等の諸事情を総合的に考慮して行うべき」(=抗告決定)と基本的には同じ判断ワク組に立ちつつ、前三者(=同一裁判官)は雇用継続に対する労働者の合理的な期待を認めたのに対し、抗告決定は、労働者の合理的な期待を認めないという全く正反対の結論となっています。
このような結論の違いをもたらした最大のポイントは、採用や更新時における病院側の言動が労働者に対し雇用継続の期待をもたせるものであったか否か、という点についての事実認定の相違によるものです。この点につき、前三者の判断は病院側の採用に際しての態度や更新に際して雇用期間は形式にすぎず期間満了で辞めさせることはないと述べた等の言動が、労働者に契約更新の期待をもたせたものがあったとしたのに対し、抗告決定はそれを否定し、逆に病院側が更新拒絶に際して「辞めてもらう」「これで最後だからね」(=この点は双方に争いがない)等告げたうえで労働者に契約書に署名を求めた点を認定し、労働者に雇用契約を期待する合理性があるとは言いがたいとしています。本件では、労働者に契約更新を期待させる使用者の言動について、裁判所の判断が全く異なるというかなり特異なケースですが、使用者が契約の更新拒絶をするに際して、トラブルを回避するためには、明確な更新手続を踏むことが求められている(例えば更新拒絶をする場合、「今回の更新をもって最終とする」等の特約を明示するなど)ことを示すものといえましょう。
(水谷英夫)
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