8 その他

8−2002.9.10 尼崎市立A高校事件
転任処分はセクハラ事件に対する抗議活動の封じ込めという不当な目的で行われた違法なものであるとして被告教育長の故意を認め、被告市に対して、国賠法に基づく慰謝料として原告ら6名につき各100万円の支払いが命じられた例
[裁判所]神戸地裁
[年月日]2002(平成14)年9月10日判決
[出典] 労働判例841号73頁
[事実の概要]
平成8年12月、A高校の理科担当の教諭であったT1が理科の実習助手をしていた女性職員及び女子生徒2名に対してセクシュアル・ハラスメントをしたとして、当時同校に勤務していた原告A、原告B、原告C及び原告DらがT1教諭の処分等を要求した。
被告教育長は、平成9年1月9日、T1教諭に対し、口頭厳重注意処分を行ったが、T1教諭は、地方公務員法上の懲戒処分を受けなかった。
原告A、原告B、原告C及び原告Dらは、A高校のT1教諭のセクハラ行為(抱きついたり、胸や尻を触ったり、ついには無理矢理キスをするという、強制わいせつ行為)に関して、その正確な事実確認を要求し、T1教諭の責任を追及したりし、セクハラ行為を追及する運動が活発化する中で、平成9年2月28日、強制転任方針(本件通知)が出され、年度末ぎりぎりの同年3月26日になって、突然転任処分の内示が出され、転任処分が強行された。
[判決の要旨]
「以上の経緯に照らせば、原告A、原告B、原告C及び原告Dに対する本件転任処分は、本件セクハラ行為が問題となっていたA高校から同原告らを放逐することにより上記抗議活動を封じ込めて、事態を収拾する目的で行われたものであり、かつ、これに連動して原告E及び原告Fに対する本件転任処分が行われたものと推認するのが相当である。
したがって、本件転任処分は、いずれも不当な目的で行われたものであるから、社会通念上著しく妥当性を欠き、被告教育長の裁量権の範囲を逸脱するものであって、違法であるというべきである。」