8 その他

8−2002.9.27 都立墨東病院事件
看護婦の業務の場合、一般業務と異なり、これを中断して退庁することは困難な場合もあるという特殊性もあるので、超過勤務の必要性の有無は個々の看護婦の判断とそれに対する婦長等の責任者の判断に基づく指導による適切な運営が期待されるが、原告の態度等とその指導に苦慮したからとはいえ、婦長が漫然と放置し、指導を怠ったとされた例
[裁判所]東京地裁
[年月日]2002(平成14)年9月27日判決
[出典] 労働判例841号89頁
[事実の概要]
病院に勤務する看護婦の場合、患者に対する治療、処置、看護について緊急性が生じる場合があるから、緊急かつやむを得ない公務の必要についての判断は、現場の看護婦に委ねられるべきであり、事後的に命令権者や婦長が緊急性、必要性を確認するのは適当でないと原告は主張し、一方、被告病院は、超過勤務手当が認められるのは、勤務時間規則7条1項、2項に規定されている手続きに従い、命令権者の判断によって行われるべきものであるとして争った。
[判決の要旨]
「……確かに、K婦長が原告に対して指導をしないようになった経緯は、……のとおりであり、原告の態度、行動とその性格に甚だ手を焼いていたことが窺われ、その指導に非常に苦慮していたことは疑いないが、だからといって、現実に退庁時間を超えて勤務するのを漫然と放置して指導をすることなく、緊急かつやむを得ない事情を認めないのが適切であるとはいい難い。」
「……日勤の業務量全体は、さほどの業務量であったとはいえず、また、原告の看護の内容が、次の勤務者に引継ができないほどの緊急性があるとまでいい難いという事情があるとしても、現実に原告が退庁時刻を超えて勤務し、それに対して、何ら適切な指導が施されていない以上、原告の主張するような緊急かつやむを得ない公務の必要を否定することはできない。」