8 その他

8−2013.1.30 Y会社事件(東京)
パワーハラスメントを受け、あるいは名誉感情を侵害されたとして、慰謝料の支払いが認められた事例
[東京地裁2013(平成25)年1月30日判決 LEX/DB 25510191]
[事実の概要]
X(女性)は、A(会社)の社員である。Y(男性)は、Aの取締役である。
Yは、業務上の必要性がないのに度々深夜にXに電話を架けたり、Aの業務に当たらない作業を指示し、これに従わなかったXを怒鳴りつけたり、Xのお茶出しが遅いなどとして、上司や同僚らの面前で「子宮でものを考えている」、「不要な人間なのに会社にいられることに感謝していない」などと怒鳴りつけたり、Xやその上司、同僚らにXを侮辱する内容のメールを繰り返し送信したり、一般客もいる中華料理店で飲食中、A会社の役員らの面前で、時に中腰となったり立ち上がったりして、指を指したり、テーブルを叩いたりしながら、30分以上に亘ってXを激しく叱責したりした。Xは、精神的ストレスから過食になり、頭痛等にも悩まされるようになり、神経症性抑うつ状態、不眠症などと診断された。
Aは、Xに対し、損害賠償金として40万円の支払義務があることを認め、これを支払った。
[判決の要旨]
Yは、Xの直接の上司ではないが、Xに対し、日常的に業務や私用を行うよう指示しており、高圧的に接することも多く、検察庁や警察の関係者等の知人がいることなどを殊更に誇示することもあったのであるから、実質的にXを指揮命令できる立場にあったものと認められる。このような優越的な地位にあるYが、Xに対してその人格的利益を侵害するような言動を行ったときには、Xは、これに抵抗することも回避することも困難であり、多大な精神的苦痛を受けることを余儀なくされる。
上記のような一連のYのパワハラ行為によって、Xの人格的利益は受忍限度を超えて侵害されたものと認められる。
Xが被った精神的苦痛に対する慰謝料として、200万円を認めるのが相当である。なお、AがXに対して支払った40万円の損害賠償金は、専ら裁判費用に充当すべきものであり、慰謝料に充当することはできないから、Yの弁済の抗弁は採用できない。
[ひとこと]
Yについて、Xの直接の上司であるか、人事権、監督権を持っているかを問わず、「実質的に指揮命令できる立場にあったか否か」を重視し、かつ、具体的な事実関係を丹念かつ詳細に検討して妥当な結論を導いた、注目に値する判例である。
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