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マーブル・チョコ
(3)入園式  波乗りパピー

「テル、こっち向いて」
テルさんはまぶしいのか、しかめっ面をしながら、カメラの方を向いた。
保育園の門に立て掛けられた入園式の看板と一緒に記念撮影する妻とテルさん。
慣らし保育期間の1週間がすぎ、土曜日の入園式。
何を着て行こうかと迷った末、結局スーツ。保育園の入園式にスーツを着ていくのも、何となく気恥ずかしい。事前にクラスの担任の先生に探りを入れていた通り、正装の人と普段着の人が半々。
ま、保育園の先生達が、正装だったので、これでよかったような気もするが。

記念撮影を終えると、クラスの教室に向かう。そこで、入園式の前に懇談会があった。
懇談会では、今後の予定などについて、担任の先生から説明があった。
「何、この愛情弁当日って?」
小声で、妻が僕に聞く。
「たぶん、お弁当を持たせる日ってことでしょう?」
えー、とは言わなかったが、言い出しそうな妻の顔。
昨日、会社の歓迎会で遅く帰った妻は、ただでさえ、不機嫌そうだ。
「入園式なんだから、もっと感じよくしようぜ」
と心の中でぼやく。

ひとしきり、説明が終わって、入園式が始まるかと思いきや、
「来賓の方の到着がまだなので、しばらくお待ち下さい。」
と担任の先生。
保育園の入園式でも来賓が来るのかー、と妙に感心しながら、テルさんの様子を観察。
0歳児クラスの中では、月齢もトップで一番動くテルさんは、他の子が、お母さんやお父さんの近くで、遊んでいるのに、1人だけ、遠く離れた広いスペースで縦横無尽におもちゃの車を転がして遊んでいる。両親は目に入っていないのでは、と思う程夢中だ。
いつもこうなのかなーと思うと、孤独な感じで、ちょっとかわいそうな気がした。

来賓もようやく到着し、いよいよ入園式開始。
子どもと一緒に入場し、子どもをひざにのせて着席するスタイル。
ただし、席は一つしかないので、その役は、妻に譲り、僕は、会場の一番後ろで立ち見。
ま、父親の宿命かと思いながら、テルさんの表情が見える場所をキープ。

「みなさーん、こんにちはー」
頭のてっぺんを突き抜けるような高い声の司会らしき女性の子ども達への挨拶で入園式は始まった。やはり、このトーンの声にはどうしても馴染めない。
保育園の入園式とはいえ、もう少し落ち着いていてもいいのでは?と思ってしまう。

つづいて、園長先生と来賓の方のお話へ。これがまた、例によって長い。
来賓の方は、2人だけだったのだけれど、園児達は、かなり退屈そう。
テルさんもちょうど眠くなる時間と重なって、グズリぎみだ。

そうこうしているうちに、新入園児の紹介へ。
テルさんは0歳児クラスで、一番月齢が大きいので、一番最初に名前を呼ばれた。
あいうえお順では、一番最後の方なので、最初に名前を呼ばれるのは、最初で最後だろう。
テルさんの名前が呼ばれると、妻は、座ったまま、テルさんの両手をあげて、ハーイと返事をした。
「それじゃ周りに見えないじゃんか!」
と心の中で叫んだ。
案の定、それ以降の人は、みんな御両親が席を立って、返事をした。
式が終わってから、妻に聞いてみると、「だって、立って返事してなんて、言ってなかったじゃん」 とはいえ、本人も感じ悪かったねー、と反省していた。
ま、飲んで遅く帰ったつけが、こんなところに出たかという感じだ。

そのあと、出し物があって、園児達は、皆で歌ったり、踊ったりおおはしゃぎ。
テルさんもさぞ喜ぶだろうと思いきや、すっかり夢の中へ。
そのあと式が終わるまで、気持ちよさそうな顔を妻の肩ごしに浮かべていた。

1時間程度の入園式。
僕の中では、妻の感じの悪さが妙に気になる入園式だった。
その分、僕が保育園ウケしなければ、と決意を新たにする入園式にもなった。

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