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女友だち 木村栄
ブローチ

 友人の服の襟に、見覚えのあるピンブローチを見つけた。
 「あら、それ?」
 「そう、あなたに貰ったのよ」
 別の友人が、どこかで見たようなジャケットを着ている。
 「忘れた? あなたがくれたんじゃない。とても着やすいわ」
 心優しい友人たちは、私と会う時には私があげたプレゼントや貰ってくれた古着を身につけてくる。この通り、重宝してるワと見せてくれるのだ。
 で、気がついた。
 過日、知り合いから外国旅行のお土産に貰ったセカンドバッグを大切にしまい込んで、言われたことがある。
 「バッグ、気に入らなかったようね、使ってるの見たことないもの」
 異な事を聞くとばかり、おろすのが勿体なくてと抗弁したのだが、あれは、贈り主と会う時にはプレゼントを身につけて感謝の意を表するのが礼儀だと、たしなめられたのだった。
 そうと知って周囲を見回すと、確かに皆マメに礼を尽くしている。
 しかし、である。
 可愛い「てんとう虫」のブローチをつけている友に、
 「いいわね、それ。私好みだわ」
 「あなたがくれたんじゃないの」
 とまあ、そこまではいい。
 次に会った時も、その次も、「てんとう虫」だったら?
 ちょっと辛いことになる。
 ブローチが気になって、話していても落ち着かない。あなたに貰ったのはこれだけよと言われているようで居心地が悪い。まして、服に合ってなかったりしたら最悪。ムリしてると思うと、逃げ出したくなる。
 過ぎたるは及ばざるより悪い。
 とまあ、これはヒマ潰しの空想だが、仮に相手がNだったらどうなるか。
 「それ、こないだもつけてた」
 「そうよ、あなたに貰ったのコレだけだもの」
 「服に合ってない」
 「合うの、買って」
 まるで愛人とパトロンだが、プレゼント、特にアクセサリーのプレゼントをするなら、こんな風に言い合える関係にしとく方が気楽だ。

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