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女友だち 木村栄
友だち「ヘン差値」

 ちょっとお洒落で落ち着いた小さな街で、パスタを食べながらMが言う。
 「○○に言われた。あなたがこんなに饒舌だとは知らなかった、って」
 「で?」
 「キムラと付き合ってるとこんなヘロヘロになっちゃうのよ、って」
 「そしたら?」
 「そうだろう、そうだろう、って」
 失礼な、と言いたいところだが、当たっている。
 出会った頃、作家・評論家風にビシッと決めていたMは、親しくなるにつれて急速に輪郭がぼやけてきた。あの、鋭く柔らかく、知と情の緩急を心得た貫禄はどこへやら、である。
 今日も、上機嫌でヘタな冗談を言い合い、見るもの聞くものワルクチの種にして笑い崩れている。
 当初、盛んに「キムラさんてヘンな人ねえ」を連発していたMは、私と付き合うには、私の「ヘン差値」に合わせて、そこそこ裸にならなければ「やってられない」と悟ったのだ。
 そのおかげで私は、ちょっと骨のある魅力的な友を得たわけである。
 最近、新しくランチの友ができた。 頑固な肩凝りでかかった按摩の先生に、「筋肉の衰えは目を覆うばかり、このまま年を重ねたら寝たきり必定」と言われて、がっくりしていたところに誘いがかかったのだ。
 「腰痛対策で水中歩行をしようかと思うのだけど、一緒にやらない?」
 誘い主は、手術がきつくなったのを潮に総合病院を辞めて開業したドクター。個人的な知り合いだが、主治医と患者の関係が重なって、どこか気のおける存在ではあった。
 それが、何回かプールで顔を合わせ、安いランチを食べ歩く内に、たちまち「タメグチをきく」仲になった。
 気が合えばの話だが、相手が誰だろうと、肩書きをはずして平らな地平に立てば親しくなれる。一歩進んで、お互いの「ヘン差値」を突破口にしてそこそこ裸になれる関係をつくり、相手の日常を思いやる手間をかければ、ホットラインの接続完了である。
 それだけの面倒を惜しんで、女ともだちという愉しみを知らずにいるとしたら、何と残念なことではないか。

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