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女友だち 木村栄
止め女

 Nが憤懣やるかたない口調で言う。
 「友人同士がトラブって、私、ずっと間に立ってきたのよ。個性の強い人同士で、お互い一歩も譲らないし。
 でもどちらの言うこともわかるから、感情的になったら成るものも成らなくなるけど、第三者の立場で冷静に伝えればわかるだろうと思って、二人の性格や気持ちを考えながら苦心してパイプ役を果たしてきたわけよ。
 そうやって土台を作って、いざ二人が会って話す段になってさ、ああなったらどうしよう、こんな場合はどうしょうって、衝突回避策を色々考えて立ち会ったのよ。なのに、なによ、二人ともすっかり意気投合して、私の入る隙もないほど盛り上がっちゃって、私なんかまるで邪魔者よ。一体、私、何だったの?」
 二人ともN抜きの二次会の楽しかったことをメールで報告してきて、Nの膨れっ面はさらに膨れたようだ。
 そう言えば、昔、「止め男」というのがあった。簡単に言えば、喧嘩の仲裁役である。当人同士では埒のあかない喧嘩を預かって、うまく捌く役。影響力も人望もあって、誰からも信頼される人の力の見せ所だ。
 頼んだ方は、かくかくしかじかと互いの言い分を述べて、後は「一切お任せ」がルール。結果に文句は言わない。「止め男」は誠意を尽くして、双方の納得の行くよう情も理もある結論を出す。丸く収まって双方感謝。
 とまあ、大向こうの拍手がくる筈のところでNはずっこけたわけだ。大岡裁きと感謝されるどころか、単なるお節介なオジャマ虫に成り下がってしまったんだからねえ。
 仕方ないよ。Nは「談合」の席を設けるまでの仲立ちをしただけで、まとめ役を頼まれたわけじゃないんだから。
 直接話しもできない二人が、アンタを必要としないほど仲良くなったんだから、それこそがお手柄というもの。 お任せ主義でない現代版「止め女」、Nらしくていいじゃない。
 まだ不満?
 そうか、又アンタの悪いクセがでたんだ。人が悩んでいると張り切って助太刀して、解決して幸せになるとトタンに不機嫌になるという、アレ。
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