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女友だち 木村栄
若返り

 「中年男って、どうして若い女というと目の色が変わるわけ? 若さなんて面白くも何ともないのに」
 「若返りの妙薬、なんですって」
 「そうかなあ。トシを思い知らされて落ち込むだけだと思うけど」
 てなこと言って、気楽に笑っていたのは何歳頃だったか。
 笑っていたNは、高齢者と呼ばれるトシになった今、「若い女」に目の色を変えている。
 先日も、歌会に若い女性が入ったと、興奮していた。
 「歌がね、すごくいいのよ。時代のまっただ中を、時代と共に現在進行形で生きている、時代の悩みを悩んでいる。そういう生き生きした手応えがあるの。トシとると、今を歌いながら、実は今につながる過去を歌ってるってことが多いけど、若い人の歌は、過去も未来もない今そのものをストレートに切り取るでしょう。今の時代の気分がよくわかるし、若かった頃の感覚を生々しく思い出すしで、刺激的で元気が出るのよ」
 ふーん、若返りの妙薬だわネ。
 その前は、親子ほどトシの違う若い友人と観る映画探しに腐心していた。
 「同世代だと、話の落ちゆく先は大抵ボケや病気のぐち話。若い人とそんな話はできないし、第一、勿体ない。だから、お互いに興味があって、話が弾みそうな映画を観て、おしゃべりの切り口にするわけ。夏なら反戦ものみたいな社会性のあるテーマがいいんだけど、何かない?」
 なるほど。若い友人は、社会的な活動の場を失って内へ内へと縮みがちな老いの関心を、外に広げる橋渡しの役を努めてくれるらしい。
 確かに「若返りの妙薬」だ。
 お金では買えない。まして、座して待つだけでは到底、手に入らない。
 見返りは、一言で言えば若い人の心をつかむ「一芸」を持つことか。
 Nの得意技は、相談力。蓄積した経験、新鮮な情報、好奇心と面倒見の良さで、悩める若い友人たちの駆け込み寺になってきた。「親」とはひと味違う内容が、蜜のように人を集めるのだ。
 Nは今もせっせと、若い血を求めてキバを、いや、一芸を磨いている。
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