判例 女友だち 映画ウォーキング 情報BOX わがまま読書 リンク おたより欄
女友だち 木村栄
年上のひと

 ピンポーン。
 「ちょっとアイデアがあるんだけど、いいかしら?」
 はい、はい。もちろんです。
 同じマンションの住人、八十代で一人暮らしのKである。
 元テレビ局の美容師、お茶の宗匠。現在は、悠々自適の年金暮らし。
 目下、私のゴミ箱制作中なのだ。
 燃やせるゴミ、燃やせないゴミ、有害ゴミ。プラスチック容器・ビン・缶・古紙・ぼろ等の資源ゴミ。細分化された分別収集は、間違えずに出すのも大変だが、「収納」にも頭を悩ます。
 我が家では、変遷の末、台所のダンボール二つに分別用のポリ袋を入れる方式に落ち着いた。それぞれのゴミの日に袋ごと出し、ダンボールは汚れたら取り替えればいい。
 ただし、便利で使い勝手はいいのだが、見た目が悪い。非衛生的な感じで、人が来ると隠すのに苦労する。
 そこで、新しいダンボールを持ち込んでKに相談した。
 「こういうの大好き、することがなくて退屈してたから嬉しいわ」
 手作業の得意なKは、いつものように、二つ返事で引き受けてくれた。
 早速のアイデアは、同じダンボールにきれいな包装紙を張り、上部三方を切って別に作った開け閉てしやすいフタを取り付け、汚れないように底にクッション材の中敷を敷く、というもの。
 わォ、いい、ばっちり。
 全く、Kにはお世話になりっ放しだ。
 留袖の帯を締めて貰い、法事の帯を借用し、余ったフキノトウをフキ味噌にして貰い、留守中の荷物受け取りを頼み・・・。ウールの着物を長着やモンペ上下に、浴衣を湯上りに、バスタオルを足ふきマットになど、創意工夫のリフォームは数知れない。 
 時折の話し相手になる以外に、私はこんな好意に値する、何をしただろうかと思ってしまう。
 いい年をして掃除一つ満足にできない私を、出来の悪い娘のように不憫に思ってくれているのだろうか。
 改めて聞くこともないが、聞けばこう答えてくれるのではないかと、私はひそかに期待している。
 だって私たち、友だちでしょう?

Copyright(C) 2001 GAL. All Rights Reserved.
 
TOP BACK