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女友だち 木村栄
異年齢の友情のゆくえ

 子どもの保育園で知り合った、苔の生えた古友だち四人。
 三十年も経つと、「子育て」という共通の話題がなくなってグループの求心性が薄れ、若い頃は目立たなかった個人差が友情の足並みを乱し始める。
 生活習慣や社会的関心の度合い、時間、経済力、体力の多寡。それに、加齢によるわがままの増長が加わって、集まりの度に小さなトラブルが続出するのだ。その都度、苦労して調整した貴重な時間が修復に費やされる。
 そんな事情から、ここ数年、四人揃っての団体行事は夏の一泊旅行と忘年会の二つに落ち着いた。
 この夏も、幹事はY。
 働き盛りのYは単身赴任中の地方大学教授。超多忙なスケジュールで仲間の集まりを振り回してきたツケが回って、万年幹事を買って出たのである。
 Yのやり方はこうだ。
 まずは「ご用聞き」。全員の近況に詳しい「次女」の助言を参考に、うるさい「長女」の意向を聞き、「三女」の了解をとりつけてプランをたてる。
 「横浜格安プランだと温泉ないけどいいの? あ、やっぱり温泉がいい?」
 「早寝組とだべり組と部屋を分けろ? ホテルで和食がいい?」
 「翌日はチェックアウトしたらすぐ帰るう? Mは緑に飢えてるから目一杯遊びたいって言ってたあ?」
 「集合は○時の○線ホーム。え、いなかったら先に行け?」
 「食事はご要望で六時半にしたけど。なに、もう三十分遅らせろ?」
 Yは誰のどんなメールにも「了解」と返信する。余計な一言が悶着の種と心得ているのだ。そして、最後に「皆の要望をまとめた結果」として、夕食時間だけを記した温泉プランが届く。
 顔が合えば、この素っ気なさが案外心地よい。「年に一度の下女奉公」と称して、あちらこちらを立てながらよく動くYのペースに乗せられて、なんなく行動予定がまとまるのだ。
 子育て中は、頻繁に超長電話で難題を持ちこんでは仲間を悩ませた、歳の離れた「末っ子」が、長じて年寄りの面倒をみるようになった。若い柔軟な頭と体力と余裕に支えられた異年齢友情だが、はて、いつまで続くことか。
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