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女友だち 木村栄
還暦祝い

 子どもの保育園で出会った四人組。
 三人目のKの還暦祝いで、恒例の一泊旅行をした。行く先は、送迎のクルーザーで出入りする離島風の湖岸のコテージである。
 ベッドルームが二つに、リビングとバルコニーがついた森のログハウス。吹き抜ける緑の風が寒いくらいだ。
 温泉露天風呂で浮世の汗と埃をさっぱりと洗い落とし、ロッジで夕食を済ませ、専用桟橋で暮れなずむ湖の夕景を楽しんで、リビングに集合。
 お目当てのおしゃべり大会の始まりである。飲物やおつまみはたっぷり仕入れてある。さてとばかり、宴の幕を開けたのだが、三十分もしないうちにYが船を漕ぎ出した。前日まで大学雑務で奔走していた疲れが出たらしい。
 一時間後、不眠続きの私が陥落。そしてK。定年で、蓄積された疲労と緊張が一気に緩んだとみえる。
 おさまらないのは、おしゃべりに飽くなき情熱を燃やすNである。
 「みんなだらしないんだから!」と憤懣やるかたなく、不完全燃焼でまんじりともしない一夜を明かしたらしい。翌朝、ふらつく足で樹木園を散歩する途中、ついに立ち寄った東屋のベンチで眠り込んでしまった。
 Nの寝顔を見ながら、しばし雑談。
 「私達、今まで、疲れててもしゃべることで元気を回復してきたのにね」
 「エネルギー源だった会が、リラクゼーションの会になっちゃった」
 「それでいいのかも。ここだと心の凝りがとれて安心して眠れる」
 「寝たい、食べたい、トイレに行きたい。今後は、誰がいつ何を言い出しても対応できるような計画にするっきゃないわネ。ま、昔の子連れ旅行の要領でやればいいんだけど」
 若いYの提案に、返す言葉のない還暦三人組である。
 東京に帰って何日か後、写真が届いた。咲き乱れるピンクのミゾハギの群生を背景に、「東屋で行き倒れ」などどこ吹く風と、艶然と微笑む四人。
 「まだまだイケル」と気を取り直して、かつての保育園児である息子に見せたら、「みんな、トシとったねえ!」ですと。
 ま、当たり前だけど。

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