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女友だち 木村栄
友だちの揺籃

 また「すいか」でごめん。
 何としても社内報用の仮の友人をつくらなければならない主人公の小林聡美が、最初に頼みに行くのが、浅丘ルリ子教授。もぞもぞと切り出すと、教授はにっこり笑って「いいわよ」と答える。意外なことに、それが何とも嬉しそうな笑顔なのだ。
 たとえ社内報用でも、「友だちになって」と言われることは嬉しいことなのだと、発見した。
 ところが、これがお節介男の介入でトラブルに発展する。
 「友だちなら同じ年頃の絆ちゃんの方が自然なのに、ねえ。家賃滞納のエロ漫画家より、大学教授の方が聞こえがいいってわけよね」
 そう焚き付けられて、面白くない絆ちゃん。お節介男に「絆ちゃんが怒ってた」と言われ、慌てる小林。絆にも頼んで「いいけど」と照れ臭そうな返事を貰う。あげく、二人に「どっちなの」と迫られて、教授の助け船でジャンケンで決めることになった。
 「友だち」に決まった絆ちゃんの条件は、「ちゃんと家賃滞納のエロ漫画家って書いて」である。崖から飛び降りる気になって、書く小林。
 事実をありのままに受け入れてこその「友だち」だ。小林が、何度も書いたり消したりして、最後に「よし」と胸を張った時、二人は本当の友だちへの一歩を踏み出していた。
 ファンタジーと言えばそれまでだが、若い大家サンの切り盛りする賄い付き下宿の共同生活は、ひょっとすると命を誕生させた海のような、「友だち」の揺籃になるかも知れない。
 寝食を共にする場では、生きることに付随する様々な問題が否応なく露呈し、触れ合う。そこから生まれた「友だちの種」が、時間をかけて適度な距離のシスターフッドに揺すられて、下宿人同士から「知り合い以上友だち未満」に発展し、友だちが誕生する。
 みんな友だちが欲しい。「友だちになって」と言われるのを待っている。なのにチャンスがない。学校でも職場でも鉄筋のマンションでも友だちの出来にくい今、すっかり廃れてしまった賄い付き下宿も悪くないと、私はテレビを見る度に思うのだが・・・。

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