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女友だち 木村栄
プレゼント

 友だちとは、モノを貰ったりあげたりすることをよしとする関係ではない。だからこそ、時たまの思いがけないプレゼントが嬉しい。
 たとえば。
 Mが、石垣島に行った亭主がマンゴーを買って帰ろうかと言ってるんだけど、あなた食べる?と電話してきた。
 モチのロン、着いたら途中まで貰いに行くワ、と答えたのはいいが、肝心の日に体調を崩してしまい、
 「残念だけど、お宅で食べて」
 「完熟でもたないから、じゃあ又ね」
ということになった。
 ところが夜、帰宅した息子が紙袋を手に、「これ、ドアにぶら下がっていた」という。中には、マニラ湾の夕陽のような真っ赤なマンゴーと手紙。
 「初めて食べる完熟マンゴーのあまりの美味しさに、遠路を厭う気持ちも失せました。これで憂さを晴らしてください」
 わざわざ届けてくれ、具合が悪いのを気遣って、黙って置いてってくれたのだ。初体験の完熟マンゴーの美味しさと友の気持ちに、確かに、滅入っていた心と体の憂さが晴れた。
 また、たとえば。
 暑い盛りに帰って、集合ポストの前を通りかかるとハーブのいい香りがする。もしや、と思ったのが、香りの発生源であるらしい我が家のポストを開ける時には確信に変わっていた。
 予感は的中して、ポストに投げ込まれていた柔らかな包みは、ハーブを詰めた手作りの小さな枕。不眠症気味の私を気遣ってくれた、アロマテラピストのKの心づくしである。
 前回はラベンダー、今回はレモンバーベナ。久しぶりの安眠を得た。
 Eは、夏に弱い料理下手の私を案じて、「根昆布だし」を送ってくれた。仕上げに一振りすると見違えるように美味しくなる魔法の一品とかで、これで俄然、台所に立つ元気が出た。
 友の贈り物は、「心のこもった」という言葉では表現しきれない、心そのもの。だから、体や心がモノで癒されるという信じがたいことが起こる。
 とはいえ、貰うばかりで何もしない私、いつかどさっとツケが回ってくるに違いないと思うと、ちょっと怖い。

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