判例 女友だち 映画ウォーキング 情報BOX わがまま読書 リンク おたより欄
女友だち 木村栄
選別回路

 「あなたって、時々ぎょっとするようなことを言うわね。普通こんなこと言うか?っていうような」
 よく指摘される私の欠点はわがままだけではない。曰く、甘え。曰く、非常識。これは「非常識」の範疇に入る。
 ぎょっとするような、ってどんなことかって?
 ま、最近の事例は勘弁して貰って、例えば、若かりし頃。
 向かい合った友人の胸にふと目が留まって、アレ?と思った、そのままが口に出てしまった。
 「あなたの胸、ずいぶん下ねえ」
 「失礼な。これは肋骨デス!」
 突き出した一番下の肋骨をバストと間違えたのである。
 肋骨をバストだなんて、全く!
 人は、ぱっと頭に浮かんだことを言うか言わないか、素早く判断する。
 が、口に直結してしまう短絡タイプもある。例えば、幼児。言っていいことと悪いことの違いがわからない。選別機能は、子どもが成長して社会性を身につける過程で獲得するものだから、無くて当然である。
 そして、社会性の発達が未熟なある種の大人。常に極地的集中力を要求される専門家にもまま見られるが、単に幼児性が強いだけの人間にも多い。
 私、即ち、後者。選別回路がないわけではないが、選別の基準となる物差しが世間一般の常識とずれるのだ。
 バストの位置が上だろうが下だろうが、どうでもいいじゃない。手足やお尻が大きくても小さくても、美人でも美人でなくても、人格や能力とは関係ないし、人の評価が変わる訳じゃなし。
 だから「アレ?」がすぐ口に出る。単なる好奇心、探究心の発露だと思っているのだ。そうして、
 「あなたがどう思うかではなく、相手がどう思うかが問題なの。人が言われたくないことは言わないの!」
 と、Nに説教される羽目になる。
 選別回路の発達には友人の影響もある。私の場合、物差しのズレは殆どNの感化なのだが、Nは私の失点を見つけると、ただちに自分を棚に上げて嬉しそうに説教する。もちろん、私のクセは一向に改まらない。
 だが、そんな時、私はしみじみと友のいる幸せを噛みしめるのだ。

Copyright(C) 2001 GAL. All Rights Reserved.
 
TOP BACK