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女友だち 木村栄
ヒヨドリジョウゴ

 春。鉢植えの余った土の所に芽が出てきた。カイワレ大根のようにひょろ長い白い茎がびっしり密生している。
 何だろう、何だろう、と思ってるうちに本葉が出てきた。裂のある細長い葉は、ヒルガオのようだ。
 どこかで昼顔の種袋を貰った覚えがあるけど、あれを蒔いたのかしら。そうだ、そうに違いないと決め込んで、植物に詳しいKに見て貰った。
 「うーん、葉は昼顔みたいだけど、表面が毛ばだってるから違うなあ」
 ま、何でもいいわ。花枯れの夏のベランダには丁度いい。密生した苗を何鉢かに分けて植えなおして、花よ咲け、早く咲けと、水だけやって見守った。
 だが、夏になっても蔓が伸びるばかりで一向に花が咲かない。
 秋。Kが見にきた。
 「あれ、どうした、花咲いた?」
 「ぜーんぜん。蔓ばかり伸びてる」
 「あら、咲いてる、ほら。白い小さな花。これ、ヒヨドリジョウゴだわァ」
 ええっ?
 そうか、思い出した。
 去年の秋、Nと玉川上水を散歩した時、潅木に絡まったヒヨドリジョウゴの紅い実が、さんさんと光を浴びて輝やいているのがあんまり美しくて、枯れた蔓を引っ張って持ち帰ったことがあった。家系図みたいな独特の実のつき方が可愛くて、リースにするのに丁度いい。やがてしぼんで埃まみれになったその実を、生ゴミに出すよりはと、土の上に置いておいたのだった。
 それがこれだったのか。
 淡い紫色の漏斗型の花ばかり想像していたので、目立たない花がついたのに気がつかなかった。
 そう言えば、一緒にシロヤマブキの種も拾った。実の一つだになきぞ悲しき、と歌に詠まれた山吹だけどと思いながら、土に埋めたのはしっかり覚えている。こちらの芽も乏しい日照にめげずに育っている。
 運動不足解消の足しにと、週に一度Nと二時間ほどの散歩をすることにしたのだが、一年後に実を結んだ、こんな成果もあったのだ。
 友情の証のようでもあり、慣れてたるみがちになった散歩に、カツを入れられたみたいでもある。
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