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女友だち 木村栄
にんじん

 ニンジンとは即ち、お楽しみの意。
 疲れた馬が、鼻先に吊したニンジン食べたさに老骨に鞭打って走る、あのニンジンだ。

 「このニンジンで、しばらくは保つ」
 「次のニンジン、何にしようか」
 などと、使う。
 Sのニンジンは、芝居やコンサートのチケット。常に机の引き出しに蓄えておき、時々中を確かめてはニンマリする。三枚もあれば大安心だ。ニンジン切れでパニクらないよう、残り一枚になると次を用意する。
 Kは、年に数回の温泉旅行。
 今年はどこにするかと、「大人の隠れ家」などの旅行雑誌を繰って懐具合と相談しながら計画を立てる。お金はかかるが、ストレスで買物依存症になるよりはマシと割り切るのがコツだ。
 「来週はサントリーホール!」
 「二ヶ月後の今日は○○温泉!」
 そう思えばこそ、燃え尽きそうな心身の、乏しいエネルギーをかき立てられもし、ささやかなリフレッシュで、永遠に続くかに見える日常に戻る元気も出る。
 私のニンジンは、って?
 えーと、その、ほら、毎度金太郎飴で気が引けるけど、例の女友だち。
 月二回ほど、ランチとお茶でおしゃべりする。天気が良ければ、おにぎり持参の公園散歩もいいし、映画見物も悪くない。凹んでも頭にきても、話しのネタができたと思えば、何とかしのげる。相手は同じでもいいし、毎回違う友でも、原則同じ時々別、でもいい。同じなら密度の濃い話ができるし、相手が違えば違う視野が広がる。
 問題があれば、解決の糸口にもなる。
 何がどうなるわけではないが、人生経験を重ねた者同士で揉み合う内に、部分で捉えていた問題の全体が見えてくる。余裕ができて、八方ふさがり状態にもアリの這い出る隙間があるのがわかってくる。それより何より。
 イキの合った軽口の応酬、古友だちにしか通じない想い出絡みのジョーク。そんな時間の楽しさが貴重なエネルギーになる。問題山積人生を生き抜く元気の素になる。
 女友だちはどんな局面にも使い回しがきく、最高のニンジンなのだ。
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