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女友だち 木村栄
賛 辞

 私がNに言ったのだそうだ。
 「あなたって、美人でも若くもないし、特に垢抜けてるってわけでもないのに、どうしてそんなに男にモテるのか不思議で仕方がない」
 議論のための逆説的な問題提起に過ぎない、この発言の真意については何度も説明して、怒りは氷解した筈だった。にも関わらず、このフレーズは、そこだけ前後の脈絡から切り離されてNの頭に焼き付いてしまったらしい。
 まったく関係のない話をしているときに、突然思い出して怒り出す。その都度説明を繰り返すのだが、私も寄る年波。時には、はて何の話だったかと、ぽかんとしてしまう。
 今の内に、ぱっと取り出して「ハハッー」と平伏させられる、葵の印籠を用意しておかなければならない。
 手始めに、別の友人にこの話をしてみたら、反応は素早かった。
 「ワォ、凄い褒め言葉!」
 そうなのだ。これは第一に、Nの、外見を補って余りある人間的魅力への最大級の賛辞なのである。
 それに、確かこう続けた筈だ。
 向き合って話していると、Nの、生き生きとよく動く表情から目が放せなくなる。眉を開いた可愛い笑顔、艶やかに上気した頬、時には童女のようにあどけなく輝く眸。黙っている時の仏頂面とは別人のようにチャーミングで、人を魅了する。美しくさえある。
 これこれ、これが「男心」を惹き寄せるフェロモンなのだ、と。
 第二に、ジェンダーフリーの男の目を通した間接的な賛辞である。
 男社会の男たちには、若さと美貌以外に女を見る目がなかった。だが、曲がりなりにも男女共同参画が進み、男女の混在が普通になった社会で、男も女を仲間として接することに慣れてきた。Nがモテるのは、そうして「女を見る目」のできた男が、女の魅力を外見ではなく内容で判断するようになった結果。言いたかないけど、一言で言えば、つまりNは、いい男(女も)の認めるいい女なのである。
 ここまで言わせるとは、「失言」の代償の何と高くつくこと!
 女の美への執念・怨念は、思案の外と言うものなあ。

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