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アフガンの歌 喜多悦子
結婚式(2)

絢爛豪華な女性たち
 あたりの、花嫁の友人は、例外なく、何十万、何百万もするかと思われるブランド時計をはめている。時計だけはない。彼女たちが身に付けている装身具は、すべて純金、まさに金銀まばゆいのである。
 突然、花嫁が声を荒げた。美容師の化粧法が気に入らないらしい。友人はクスリと笑った。「美容師より、彼女のほうが上手なの。毎日、化粧しているだけだから・・・」
 とにかく、こうして、準備は整った。次から次から、私には金銀ギラギラ、宝石店のモデルのような女性たちが現れる。この街に、お金持ちの女性がこんなに沢山居たのか、と私は思った。女性用の待合室には、新郎側からも新婦側からも入る。つまり、同じ一族とはいえ、上流二家系の女性が集合しているのであろう。このような階層では、多くの女性がタバコを吸うこともあたりまえらしい。
 友人がささやいた。「もし、今夜、花嫁の父親も出席するなら、ベナジールもきたのにね。」
 「ベナジールって、首相のベナジール・ブットが? でも、何故、一人娘の結婚式に父親が出ないの?」
 「不承不承で認めたけど、本当は、この結婚には反対ということを知らせるためには、ネ。出たくとも出られないのよ。だから、彼女の兄が代役よ。」

お腹がすく結婚式
 メインの会場の入り口には、武器探知器が設置されていた理由も納得した。
 本当は、身も心もしりあっているはずの新郎新婦も、ここにたどり着く長い道程を思ってか、式では、しおらしくみえた。美男の新郎は、本当に、まだ見ぬ新婦の顔を、まもなく見られるという期待にワクワクしているようにも見えた。周りを客が取り囲む。花嫁を乗せた「駕籠」というか、天蓋が運び込まれる。まだ顔をあらわさない新婦と新郎の頭上にコーランが掲げられる。伸びのある、すばらしくよい声で祈りがささげられる。新婦新婦を被うベールの中に、鏡が差し入れられ、花嫁は鏡越しに新郎の顔をはじめて・・・そっと見る。その瞬間は、なかなかにムードがある・・・ように見えた。そして、本当に晴れやかな笑顔の花嫁が現れた。オメデトウ。
 実は、ここに到るまでに、色々なしきたりがあるらしいが、伝統的な一族とはいえ、昔に比べると、簡単になっていることもあると、知人は解説してくれた。
 豪華な料理が振舞われるのは、ほとんど、真夜中に近い時間だ。何時もそうだが、この国の結婚式の付き合いは、実におなかが減るのである。

階級の差
 披露宴が始まると、いささか無礼講になる。といっても、アルコールはご法度の国だから、単にやかましくなるだけともいえる。まだ、同じ位置にいる新婚カップルの周りに、次から次にお祝いの声が舞い上がっている。その一群の客の後ろから、伸び上がってみている子どもたちがいた。豪華ではないが、新品のシャルワール・カミーズを着せてもらった使用人の子どもたちである。11、2歳くらいの二人の少女が背伸びしている。その愛らしい、しかし無表情な顔付から、私は、かつて出た、もう一つの結婚式で見た同じような光景を思い出した。もっと小ぶりの式であったため、客の数も少なく、間じかに花嫁をみることが出来た。ほんの5、6列の客の後ろから、新品だが粗末な綿のシャルワール・カミーズの少女たちが、伸び上がり、飛び上がり、花嫁花婿を眺めていた。
 あなたも、いつか花嫁になれる、と私は云うことはできた。が、どんな花嫁であり、どんな結婚式を持てるのか・・・。目の前の花嫁花婿がそうであるように、彼らの子どもも、その子どもも、そのまた子どもも、永遠に上流は上流で、使用人は幾世代にもわたって、今後もそうであるのだろうか。えんじ色のチャドルを被った少女、濃い緑のチャドルの少し年長の娘、この少女達は、一体、どう思っているのであろうか?

 女性コーナーでは、踊りがはじまった。足首手首に鈴をつけて、うたいながら踊る芸人の一群が招かれていた。単調で、あまりリズミックではないが、それにあわせて身体をゆするくらいの人は居るが、女性が人前で踊ることははしたない行為とされるため、客は、ただおしゃべりしながらそれをみているのである。 時に、小金がまかれる。踊り子へのチップでもある。
 豪華な食べ物の列。ひとしきり、客が食べた後、召使の子どもたちが手を伸ばす。メインゲストも、私も、そして彼ら彼女らも、同じ食物を食べているのが、何か消化不良になりそうな気持ちがのこった。

 夜更けの帰路、長時間、私を待っていた運転手は眠たげで不機嫌に見えた。私も、おめでたい式に参加した割には、こころが晴れないまま、まだ、まだ続く華やかな儀式の場を去った。
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