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老親とともに 信子と啓子
学芸会(信子)

 秋は文化祭の季節。デイの施設でも何処も賑やかにいろいろの趣向を凝らしたお祭りが催される。母は、一つの方では書道を習っていて、今回は与謝野晶子の歌を書き出品した。もう一つの方では、最近になって参加したコーラスグループで合唱をすることになった。
 女学生の頃から歌は好きでよく歌い、私の遠い記憶にもいつでも口ずさんでいる母がいる。いつごろからか母は歌を口にしなくなったが、私が退職して合唱団に入団して以来、又時折口ずさんでいる。そんな時デイにもコーラスグループがあることを知って、早速参加することになったのだ。

 しかし、正直少し心配だった。音楽学校に行きたいと思ったこともあるというのだから、大体の音は取れるのかもしれない。楽譜も読めるのだろうけれど、、、、、、
 「パートはどこ?」
 「アルトよ」と母は何くわぬ顔をしている。
 「メロディーじゃないよ。ソプラノの方がいいんじゃない?」と私はいってみるが、「私はやっぱりアルトよ」と頑張っている。たしかに昔むかし、私がソプラノを、母がアルトを、姉のピアノ伴奏で歌っていたことがある。何も言わずにいたけれど、私はとても懐かしい気持ちになっていた。多分、母もそうに違いない。
 デイから帰宅しても、楽譜をながめて小声で練習をしていた。
 いよいよ当日、ちょっとおしゃれをしてお迎えのバスに乗って出かけた。私も少しおしゃれをして、一足遅れて出かけた。
 正面玄関は美しく飾りつけがされていて、さながら小学校の学芸会。ホールには書や水墨の展示。手芸の作品は可愛らしいポシェットやパッチワーク、刺繍や和紙を使った雪洞まで並んでいる。うそ!!これみんな作ったの!! 本当に見事だ。
 思いなしかみんな少し興奮しうきうきしている。
 いよいよ演奏会が始まる。出演者はボランティアを含めて20名ぐらいか、男性も2〜3名。私は母がよく見える位置に座った。みんなおそろいのカバーの譜面をひろげ、胸には四葉のクローバーの小さなブローチを付けて真剣な顔。私は、思わず吹き出しそうになってしまう。
 四葉のクローバー、すみれの花咲く頃、恋はやさしい野辺の花よ、菩提樹。
 私も知っている、母たちの女学生時代の歌、男性のお年寄りも歌っている。若いボランティアの声に助けられつつも、しっかりと美しいハーモニーがホール一杯にひろがった。

 「この歳になって、こんな歌が歌えるなんて、涙が出てきそうに嬉しいって、合唱指導の先生にお礼を言ったわ」と母。私も胸がいっぱいになった。
 子供たちの学芸会を思い出した。成長していく姿をみるのは嬉しかった。しかし、親の学芸会もまたなかなか楽しいものである。
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