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老親とともに 信子と啓子
半ぐるまで(信子)

 母は、家の中では杖もつかずゆっくりながら自由に歩く。外に出れば杖を必ずつかい、段差のあるところは、誰かの手を借りるようにしている。それでも、一度に歩ける距離は200メートル位だろうか。途中坂道にであったり、段差が多かったり、でこぼこがあったりもするからだけれど。おまけに歩く速度がゆっくりなので、真夏や真冬のことも考えて、外出には車椅子を併用することにした。
 母が、歩いて出かけられるのは、主治医の医院と美容院と川向こうのレストラン。いずれも、4,500メートルの場所。一度で完走(?)は無理だけれど、途中で一休みをいれれば行ける。しかし、時間がやたらかかるので、まずはお医者様に車椅子の併用で行ってみることにした。
 車椅子とはいえ、新車である。母も「とうとう車椅子」という気分よりも、「最初は私がおすのよ」と張り切っている。200メートルも行けば急な坂でガードを越さねばならないので、母がまず行けるところまでということにした。
 「なかなかいい具合や」とニコニコ顔。杖をたよりに歩くよりも、車にさそわれて足もスムースに軽く動く。私は、手持ち無沙汰にエスコートしながら、「おかしな姿ねえ」と。坂道にきて、選手交代。私より10キロ重い大切なお荷物を乗せて、坂道を下って上るのはちょっとしたお仕事だった。
 結局、その日は母は全行程の3分の2を車椅子に乗ってしまった。車椅子を押して歩くのも具合はいいけれど、乗っているのは「いい気持ちよ」とご機嫌である。

 数日後、お天気もよかったので、今度は美容院を目指すことにした。
 こちらはやはり坂道でガードを越さねばならないが、そのあとは平坦な道が続く。おまけに裏道だから車の走行も少ないし、私も楽できるかなと思いながら出かける。
 この前同様、母先行。私が交代してガードを越したところで、今回は「私が押して歩くわ」と母がいう。「できればそのほうがいいね」と私はエスコートへ。ところが、数歩歩いたところで、「あんた乗ってごらん?」というのだ。「へええ、私が乗るの?」「そう」。
 言われるままに私が車椅子に乗り、母が押して歩く。「空のを押してるより、ずっとこのほうがええ、安定してるし、、、、」と。確かにそうかもしれない。私の体重はわずかに30余キロ、車椅子を安定させるに程よい重量かもしれない。
 「人が見たらなんて思うかしらねえ」と二人で大笑い。
 以来、半車(半分車椅子)と称して、商店街やデパートまで出張している。
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