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老親とともに 信子と啓子
高齢社会は管理社会?(信子)

 私は隔週土曜日、主治医に母の薬の処方箋を書いてもらう。時々は診察室に入るが時間に余裕のないときは、「お変わりありませんね」「はい」でおしまい、そのまま薬局に急ぐ。
 小さなレジ袋に一杯の二週間分の薬を、母は小袋に分けている。母は今のところ自分で編み出した整理法で、何とか間違いなく無事故できている。
 しかし、高齢者にとって薬の管理は大きな問題なのだ。最近では、薬局のほうでも薬袋の表書きにいろんな工夫をこらしている。たとえば、朝、昼、夜、就寝前と大きく赤字で印刷したり、袋の表に薬の名称や一回の分量、食前・食後・食間の別を一覧表にしてつけていたりだ。字が大きく書体もはっきり分かりやすいのもよい。
 この薬にはじまる、高齢者の健康管理、どうも胡散臭いのだが、それは私だけなのだろうか。
 実は、健康診断の結果、母はたんぱく質がやや平均数値より低いということで、管理栄養士による栄養相談を受けるように薦められた(たんぱく質の数値を除いて、他には何の所見もつけられていなかったのだが)。栄養相談を受けるにはランダムにえらんだ三日間の三食プラス間食・夜食など、細かに記録をとって、事前に提出しなければならない。料理に使った材料や摂取した分量も含めてである。
 私は、記録をとりながら“まぁこれなら、バランスもとれてるしそこそこいい線”と自画自賛していた。何より母は、ほぼ例外なく「ああ美味しかったわ、ご馳走様。」といってくれる。私の目安は、この母の一言でいいのだと考えてやってきたのだし。
 管理栄養士は、私の書いた記録に目を通しながら「よくやってらっしゃいますね。十分栄養も取れているし、お肉もお魚も大豆も野菜も果物もちゃんと入っています。バランスもいいですね。少しカロリーが多いかな。年齢からすると、これ以上は食べ過ぎないようになされば。お肉はできるだけ、加工肉を避けましょうね。加工段階で塩分が使われますから。たんぱく質も十分ですよ。食事だけではなく、筋肉を鍛えるストレッチなどもなさるといいでしょう。でも、まずほぼ満点ですよ」と。
 私はとても満足だった。母が美味しく食べて喜んでいる、それが正しいのだと、私は持論の正しさが証明されたのだと嬉しかった。ところが、窓口にきて「次の相談の日程を...」と当然のことのようにきかれる。“なに、また?”、あの管理栄養士の話は確かに参考になった、また会うのもいやではない。しかし、私には母の「美味しかった」の一言が必要かつ十分なのだ。どんなに頑張ったって、母はあと何年生きられるのだろう、10年?それは難しかろう。せめて「美味しかった」といえる食事をしてほしい...
 などなど思いつつ、次回の相談は断ったものの、何処かひっかかった。そのうち高齢者用の缶詰栄養食ができたりするのだろうか。缶の上に、朝・昼・夜の赤い字が印刷されて。
 高度な管理社会の悪夢?
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