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老親とともに 信子と啓子
異文化交流(啓子)

 退院した母には今までよりずっと長い時間のヘルパーさんの助けが必要になった。お弁当を食べることも飽きてしまったし、パンを焼くのも面倒になって、食事はほとんどヘルパーさんに作ってもらうことになった。
 母は関西生まれの東京育ちである。もう半世紀以上、東京で夫と二人の男の子のために、食事をともにしてきたせいか、かなり脂っこい洋風なものが好きである。もっとも老人ホームの栄養士さんに聞いた話によると、老人がさっぱりした和風なものを好むというのは、うそで、結構、中華料理などこってりしたメニューの方が好まれるという。
 ところが、母のところにやってくるヘルパーさんは東北出身の女性である。生まれも関係しているだろうが、なによりも体が資本の仕事だから、健康には人一倍気を使っていて、食事には神経質で、なかなか自然食志向である。漬物や野菜のおひたし、高野豆腐、湯葉、茸いっぱいの味噌汁。そして豆腐に煮魚、干物。おやつもすごい。真っ黒なごませんべい、胡桃もち、お汁粉、葛湯、乾燥芋、干し柿など。
 「こんな田舎っぽいものめしあがらないでしょうが」と言いつつも、「でも健康にはいいんですよ」と彼女は自信満々。母は「はじめて食べるわ。おいしいわ」と気をつかって言うのだが、決してそうは思っていないことは傍で見ているとよくわかる。お相伴している私の方がなにやら懐かしい味だと喜んでいる。
 逆に、私がデパチカで、おしゃれなサラダやサンドウィッチ、クッキー、ゼリーなどを買って持っていくと、彼女は目を輝かして「まあ、こんなものはじめて見ます。どこに売っているんでしょう」と不思議がる。
 新しい人との出会いは必ず新しい文化との出会いがある。90歳を前にした母も異文化ショックという経験をするのである。
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