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老親とともに 信子と啓子
大切なお薬(信子)

 母の物忘れはすこしずつ進行している。当然この年齢ではやむをえないことだろうけれど、しかしできることなら何とかしたいと思う。そんな時シンポジウム「もの忘れフォーラム」の記事にであった。そしてそこに示された“家族のためのチェックリスト”に飛びついた。母には申し訳ないけれどチェックさせていただこう。それは、19問の質問項目に、それぞれ@変わらない、A多少悪くなった、Bとても悪くなった、で点数をつみあげ総合評価し痴呆の進行度をみきわめるというものである。得点が24点以下ならばお医者様に相談をと忠告している。私の採点は厳しいかもしれないし甘いかもしれない。25点だった。いずれにしろボーダーライン。少し様子をみながらと思いつつ1ヶ月が過ぎた。
 そうしたある日、母にチェックリストの話をすると好奇心旺盛な母のこと、「やってみてやってみて」ときわめて積極的。結果は22点だった。「今度、先生に相談しようね」「うん」少し寂しげなのが気懸りだった。主治医のところでは、今までの経緯を話して、いわゆる長谷川式といわれるテストを受けた。自宅でやったテストよりやや高度にも思えたが、20点だった。先生は「ほとんど誤差のうちです。でもお薬が使えますからやってみますか?」母は「お願いします。治るのですか?」と身をのりださんばかりだった。不老長寿というものはないし、薬の効果も個人差があるといった説明を受けて投薬治療が始まった。
 そして1ヶ月。母は明らかにクリアになった。毎晩のカレンダーの差し替えも難なくできる。おまけによく喋るようになった。先生も「効果があるようですね。診察室に入っていらっしゃる時のお顔もいきいきしていますよ。」といわれ、母も私も本当に嬉しかった。久し振りに訪ねてきた姉から「いいお薬もらってるんだって?」といわれ、母は「そう、でも私も一生懸命に努力してるのよ」といって、みんなで大笑いをした。

 アリセプト。アルツハイマー病の治療薬である。病気を治すことはできないが、進行を遅らせる効果がある。お薬の説明には、脳の働きを活性化しますと書かれていた。精神を亢進させる作用もあると先生のお話。10年前には聞いたこともないお薬だけれど、遠からず完全に病気を治す薬もできるのかもしれない。
 アリセプトは、母の大切なお薬。なくなりそうになると、「明日でなくなるの。お薬もらいにいってね」、「私の大事な大事な、アリセプト」と繰り返している。そして、ご近所のボディーショップ(通院の折よく立ち寄るお店)の主人にまで、「とても良いお薬よ、おばあちゃんもお使いになったら」などといっている。薬の効果はいつまであるのだろう。いろいろ考えると複雑な心境になる。第一、私も使いたいよ。
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