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老親とともに 信子と啓子
おつゆの話(啓子)

 朝はトーストに牛乳、昼はインスタントラーメン、この2食は母が自分で用意する。残るは夕食だが、週に3回福祉公社のお弁当をとっている。あとの4日は義妹と弟と私がローテーションを組んで、作ったり買っていったりする。
 私のうちから母の所へはスープが完全に冷え切る距離なので、おつゆ類は運べない。で、母の台所でみそ汁などを作ることが多い。音を聞きつけて台所にやってきた母は「おつゆなんか自分で作れるからいいわよ。ずーっと作ってきたんだから」と言う。
 確かに、ラーメンを作れるのだから、おつゆだって作れるはずなのだが、この3年ほど母が作っているのを見たことがない。どうも具の取り合わせを考えるのが面倒らしい。私としては食の細い母に少しでも多く食べてほしいし、水分をとらずに食べて喉に詰まったりするのも心配だから、必ずおつゆと一緒に食事をしてもらいたいのだ。時間がなくてお椀にインスタントみそ汁の具とみそを入れてあとはお湯を注ぐだけにしておいても、翌日見るとそのままになっている。
 「どうしておつゆを飲まないの」と聞くと
 「お茶で食べたから平気よ」とケロリとしている。
 これは面倒というより忘れているのだと思う。
 手先を使うのは呆け防止に良いというから、ときどき「おつゆくらい自分でつくりなさいよ」と強くいうことがある。
 猛然と母は反撃してくる。
 「80年以上も、お父さんやあんたたち子どものためにおつゆなんかずーっと作ってきたんだから。この年になったら好きにさせてよ。おつゆの1回くらいのまなくたって死にゃーしないわよ」。
 私は黙ってしまう。
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