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老親とともに 信子と啓子
庭の草(啓子)

 「庭の雑草が気になるようで、何度も言われます」とヘルバーさんからの連絡帳。
 「植木屋さんが来なくて困ると毎回嘆いておられます」と看護師さんからの連絡帳。
 私はため息をつきながら返事を書く。「何回も植木屋さんには催促をしているのですが、混んでいて順番が回ってきません。母には何回も事情を説明しているのですが」。
 確かに今年の夏は雨が多かったせいもあって、草は伸びにのびて、私の背丈を超すくらいになって濃い緑の風を送ってくる。子猫だったら迷子になるくらいだ。
 義妹が出入りの植木屋さんに頼んでくれたのだが、なかなか順番が回ってこない。母とすれば起きて雨戸を開ければイヤでも庭の草が目に飛び込んでくるし、リビングに一日座ってテレビをみている間にも庭の様子が目に入る。「こんなに雑草をはびこらせていて人様はなんと思うだろう」と気に病んでいるのと「私が差配していた頃にはちゃんと植木屋さんがきてくれたのに」と「主婦業」を降りた無念さがない交ぜになっているように思われる。
 「N子さんが植木屋さんを頼んでくれているだから、あまり何回も言うとN子さんが気にするわよ」と姑嫁関係に気をつかう私に「わかっているわよ。あの人の前では言わないわよ」と母は言うのだが、とてもそうとは思えない。義妹からの連絡帳にお詫びや「今日も催促しました」という釈明がたびたび書かれていた。
 一月ほどしてやっと植木屋さんが来て、3日がかりで草を抜き庭木を剪定してくれてすっきりした。母は大満足で、毎晩転勤先から電話をかけてくる弟に「庭がきれいになって気持ちが良くなった」と毎回報告している。私も行くたびに「どう? うちの庭もきれいになったでしょ」と自慢されて、もうそろそろ1月になる。
 相前後して、玄関の前の道路に耐震工事が行われた。以前は簡易舗装だったらしい。今まで母は何も言わなかったのであるが、実はうちの前の道路だけが正式の舗装でないことを気にかけていたということがわかった。「ようやくよそと同じ道路になった」と喜び、「ちゃんとした道路になったでしょ」と、これまた弟の電話に毎回言い、私にも何回言ったことか。
 次の母の関心事はなんだろう。
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