判例 女友だち 映画ウォーキング 情報BOX わがまま読書 リンク おたより欄
女友だち ときにはしみじみ、ときには抱腹絶倒する女の友情をめぐるエッセイです。
友情の賞味期限

 私の靴の定番はハイカットの細身の スニーカーである。外反母趾の痛みで、 ヒールの靴がはけなくなったのだ。
 むろん簡単に諦めたわけではない。
 ある時、足に優しい靴作りで知られ たシューフィッターを訪ね、私の履け るパンプスを選んで欲しいと頼んで、 引導を渡されたのである。
「あなたの足は、パンプスを履ける 足ではありません」と。
 そして、踵三センチの、足をすっぽ り包むベルトつきの靴を選んでくれ た。以来、それが唯一の冠婚葬祭兼用 のお洒落履きになっている。
 中高年になると足のトラブルが顕在 化するのか、今度はNが見慣れないペ タンコ靴を履いて、浮かない顔でペタ ペタ歩いている。足指の痛みに加え、 職場の若い友人に「まだパンプスはけ ないんですか、まだですかあ」と言わ るのがこたえているのだ。
 「パンプスを履けない女なんて、一 緒に歩くのもカッコ悪いって言わんば かりなのよ。スーツの背筋をシャンと 伸ばして、カッカッとハイヒールの踵 を鳴らして歩くのができる女、ってイ メージが刷り込まれてるんだわねえ。 ペタンコ靴も期限付きと思えば我慢も 同情もするけど・・って感じ」
 ワタシも年をとったもンだと呟くN のぼやきを聞いて、友情は年齢不問と 信じていた私の自信もぐらついてき た。対等な関係は体力的にボロの出な い間だけのことかも知れない。
 時折、若い人が「○さんはきれいに 年をとってる」とか「△さんは年の取 り方が下手だ」などと話しているのを 耳にする。十歳下の友人も、「キムラ さん見てると自分の十年先が見えてす っごく参考になる」と、ウラのありそ うなゴマを摺ってくれる。「年寄り」 は若いつもりでも、若い人は常に相手 の年齢を計っているようだ。
 同年齢だからといって安心はできな い。「ぼけて知的な会話ができなくな ったら、私たちの関係どうなるの」が、 一緒に年を取ってきた友人仲間の気が かりになってきた。
 さて、友情に賞味期限はあるか。
 これはちと厄介なテーマだと思いつ つ、踵の磨り減ったスニーカーの足を 運ぶ私である。

Copyright(C) 2001 GAL. All Rights Reserved.
 
TOP BACK