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女友だち ときにはしみじみ、ときには抱腹絶倒する女の友情をめぐるエッセイです。
もらい下手

 「夕食まだでしょ? 例の黒米、コシヒカリと炊いたらすごーく美味しいのよ。赤飯の元祖と言われるだけあって色も香りも小豆そのもの。食べてみない?これから車で届けるから」
 突然のMの申し出に、慌てる。
 「いいわよ、そんな。わざわざ届けて貰うなんて悪いわよ」
 遠慮するのは当たり前だ。
 黒米は赤米と並ぶ古代米で、一部の地域で神事用として受け継がれてきた餅米の一種。北海道で栽培できる品種を作るべく、道産の「たんねもち」と掛け合わせて十年かかってできたのが「きたのむらさき」とか。指導した大学の先生がMの友人で、おみやげに貰ったと昨日電話があったばかりだ。
 食べたいのは山々だが、ついでならともかく、電車を乗り継いで四〇分の距離をそのためにだけ足を運ばせるのは、いくら車でも申し訳ない。
 「そんなにして貰ってもお返しできないしなあ。あ、そうだ。松茸二本あるから一本あげる。それならいいか」
 押し問答のあげく良案を思いついたつもりの私に、Mは怒り出した。
「お返ししなきゃ私の好意受けられないワケ? どうもずれちゃうのよね、あなたって。珍しいものだから食べさせたいって、それだけのことじゃない。もういいわよ」
謝りながら、思い出した。
 Mの親切は北海道育ち。一夜の宿を断れば、熊に襲われるか凍死するかの厳しい自然環境で培われた互助精神が底にある。義理だお返しだという都会人の社交とは隔絶した人情なのだ。  そして私は、照れ屋で「貰い下手」の東京土着民。こどもの頃から、よく言われたものである。何かあげても「なんで?」と当惑顔で言い、貰う理由のないことを述べ立てて、やっと説得されて受け取るという風。嬉しいのか迷惑なのかわからない、と。
 気心の知れてる筈のつきあいのそこここで、こんなカルチャーギャップが顔を出す。誠に「友だちってほんとに楽しいですねえ」である。
 貰い下手で危うく食べ損うところだった黒米赤飯。プチプチした歯ごたえが実に美味で、ちょっぴり反省の塩味が加わってゴマ塩なしで充分いけた。


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