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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
「法と心理の協働―女性と家族をめぐる紛争解決へ向けて」(二宮周平・村本邦子編 2006年 不磨書房)

 カーラジオで、若い母親が「自分の生活が虐待にあたるかどうかをみてほしい」と相談し、その生活が録音されているのを聞いたことがある。3歳と1歳の女の子がいて、その母親は食事は3度3度作るが、それ以外の時間は子どもとは別室でほとんど寝ている。体が悪いわけではなくて、深夜までメールやゲームをしていて、昼間は眠くて仕方ない。当然子どもは喧嘩をするし、一日室内にいるから飽きてぐずるし、食欲もわかない。二人の幼児が泣いたり母親を呼んだりすると、親がものすごい剣幕で怒鳴る。その繰り返し。早朝出勤して夜遅くくたびれ果てて帰宅する夫は、昼間家庭内で起きていることにまったく気がついていない。明らかにネグレクトである。ただ、母親がこのままでいいとは決して思っていないのだか、どうしたらいいのかがわからないでいる。さて、この母親と子どもあるいはこの家庭をどう支援するべきなのか。
 暗澹たる気持ちで、この本を広げて「ケースに見る法と心理の協働の可能性」の「児童虐待」を読んだ。法的・制度的サポートシステムとカウンセリングを含めた母親そして家族に対する援助の仕方が具体的・簡潔に述べられていて、参考になった。あの母親に読んでもらいたいというか、その母親の存在に気づいた人々に読んでもらって、早速手を差し伸べてもらいたいと思った。
 一般的に考えると、法律学と人間の心理を考察する心理学とは相反するもののように感じる。しかし先の児童虐待の例をみるまでもなく、実際の人間の生活はそのどちらからの網掛けも必要なのだ。新しい法曹養成システムであるロースクールが、この難しいが大事な問題にチャレンジしているのだとしたら、この国の司法制度の未来も少しは明るいのではないだろうかと、思わせられた。さらにこの本の優れているところは、現代の家族・人間関係の修復のためにジェンダー視点を取り入れている点である。それも理論だけではなく、実際のケースに沿いながら検証しているところが、すばらしい。
 執筆者の多くは、立命館大学法科大学院の教授である。テキストっぽくなく平易な叙述が心がけられているように思われる。
 法曹関係者、特に家庭裁判所の関係者や福祉機関に働く人々におすすめしたい。
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