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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
『川の流れのように』(美空ひばり・集英社文庫)

 その昔、大晦日にこたつに入りみかんを食べながら、紅白歌合戦を見て、美空ひばりのダサイ衣装や振りの悪口を言うと「ああ今年も終わり」と思ったものだ。
 「歌謡曲の女王」「天才歌手」といわれたこの人の家族思いは有名で、特にステージママであった母親との関係は「一卵性双生児」といわれるほどだった。であればこそ、だれも彼女の耳に痛い助言をしてあげる人はいないのかと、華やかだがなんともやぼったいドレスをみるたびに、彼女の孤独に一人思いをはせたりしている「ひばりの隠れフアン」だった私。「一度決めたら二度とは変えぬこれが私の生きる道/胸に根性の炎を抱いていくぞこの道まっしぐら/泣くな迷うな人生一路」などというドスの利いた歌が実は好きだと公言できるようになったのは、ひばりが亡くなってからである。
 ひばりの晩年のヒット曲から題をとったこの本、「自伝」「メモリアル・ノート」「闘病記」から成る。「自伝」部分は「序」と「あとがき」が遺されていて、彼女がいままで何冊か出版されている「ひばり物語」に飽きたらず、自分で半生を振り返ろうとしていたことは確かだが、その間の内容はほとんど書かれずじまいで、断片的にのこされたもので編集されている。強烈に印象に残るのは、家族を後ろ手に庇って世間(的な常識)と戦う彼女の壮絶な姿勢である。また母親への終生変わらぬ忠誠と養子となった息子への盲目的といってもいい愛には、驚かされる。母親を独占したことで他のきょうだいの思いあるいは、養子の産みの母の思いへの配慮が全くないようにみえることにもびっくりする。
 彼女の晩年の私生活には不幸なことが続いているが、その受け止め方もあまりにもストレートで、複眼的な思考が窺えないことにもショックを受ける。良い友だちがいなかった人(作れない環境にあったというべきか)の不幸を思う。
 自分でも書いているが、「子どもとして」「一家の主として」「歌手として」「母として」の感情は過剰なまでにあふれているが、「女として」の感情の吐露がないのが不自然な感じがする。この部分は最後まで抑圧せざるをえなかったのだろうか。あんなに艶っぽい歌を歌ったのに。
 息子との交換日記(親の心子知らずで長続きしていないのは残念だ)や、絵にてらいのない素直な情が出ていて哀しくなるくらいだ。

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