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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
谷口真由美『日本国憲法 大阪おばちゃん語訳』文藝春秋 2014年

 地方自治体が憲法集会の「後援」を拒否するとの報道が相次いでいるこのご時世、「憲法を護ろう」のほうはなぜか触らぬ神に祟りなしとでもいうのか、「政治的で中立的でないもの」とタブー化される一方、「改憲」という言葉はやけに耳にするようになってきた。あれ。本著の冒頭にあるようにほんの10年前は憲法がこんなに世間の注目を集める時代ではなかった。「これが売れたら、ある意味エライ世の中になったことですわ」という本著は結構な売れ行きだそうで、喜んでいいのかどうなのか…。
 改憲、護憲という前に、「知憲」でっせ、と著者はいう。おっと、著者を紹介し忘れていた。全日本おばちゃん党代表代行にして、国際人権法、ジェンダー法を専門とする、大阪国際大学准教授。その愛とシャレに充ちたツッコミトークで、「日本国憲法」の非常勤講師を務める大阪大学では「ベスト・ティーチャー賞」を受賞しているとか。大阪のおばちゃんツッコミトークが炸裂する憲法条文解説など、今までにあっただろうか。おばさんではあるが淡々とした東京都民である私でもぐいぐい、一気に読み切れた。
 法律家の本というのは、ついどこからもツッコまれないように静々と、悪く言えば堅苦しく無味乾燥なものになりがち。この本のようにここまで勢いをつければツッコまれる余地を与えないかも?そして語り口ではハードルを下げてとっつきやすくしているが、内容を下げていないのが素晴らしい。コンパクトでかつ行間も十分とっているこの本で、「積極的平和主義」「差別」「自己決定権」「外国人の人権」「ヘイトスピーチ」etc.にどんどん言及しビシリビシリと「あんたも考えんとあかんで」(←大阪おばちゃん語風にしてみたが、間違っているかも)と促す手練に舌を巻く。家族法の規定(男より女が2歳下の婚姻適齢、女性のみに課された再婚禁止期間、選択的夫婦別姓、嫡出推定…)についてもずんずん触れながら、「男女平等ってあるねんけど、ホンマそうでっか?」と迫る。うーむ。家族法改正を求めて長く細々と運動してきた私などは、これらについてもどうも長々憲法の趣旨はこうこうで、民法の制定の趣旨はこうこうで…と長々語り過ぎ誰にも振り向いてもらえなかったのではないか…。堅苦しい語彙を使わずかつパワフルにアピールしていく、そんな技を見習いたい(後述する「不断の努力」!)。
 人権だけでなく、統治(国会、内閣、裁判所)、天皇についてもテキパキと解説、その上、「「押し付けや!」と言い切る人がいてますねんけど、ちゃんと憲法の成立史読みはったんやろか?」と憲法の成立史まで振り返ってくれる。ほんまに懇切丁寧なおばちゃんやっ(だんだんうつってきた)。
 大切なこと。権力者が暴走せんようにしばるためにあるのが憲法でっせ(99条参照)。立憲主義っちゅうのはそういうもんや。「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」(97条)で「侵すことのできない永久の権利」(11条)として人権が尊重されることになったけれども、守っていくのは、私たちの「不断の努力」が必要ですねん(12条)。
 前文もとても大切。中高生のころ、憲法が大好きで何度も読み返した。とりわけ前文がお気に入りだった(変わっている中高生だろうか…)。前文と憲法全体から引き出される憲法の基本原理、国民主権・基本的人権・平和主義。おばちゃんと声を合せて言いたい、「なんでも最初が肝心やから、なんべんでもしっかり読んでみてや!」。イヤ最初だけでなく、条文+おばちゃん語訳+解説の本著全文を読んでもさして時間はかからない。是非何度でも読んでみてや!(良)
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